セミナーレポート

“考えるクルマ”と交通社会の未来日産自動車(株) 二見 徹

本記事は、画像センシング展2014にて開催された特別招待講演を記事化したものになります。

360度のセーフティシールドでぶつからないクルマを実現する

 次に大きな鍵を握るのが「知能化」です。日本の交通社会の抱えている課題は大きく4つあります。①事故,②渋滞,③高齢化,④運転時間,です。交通社会全体で見ると,事故に関しては年間の死者は約4000人と,70年代80年代(ピーク時には約2万人)に比べ相当減っています。ところが事故の件数は年間60万件と,減っていません。また,渋滞では時間のロス大きく,年間約12兆円の経済損失があると言われています。高齢化も進んでおり,65歳以上の人口は現在3000万人と言われています。運転時間は年1人当たり190時間で,運転されている方はこれだけの時間を運転のためだけに使っています。
 衝突安全性能の向上で死者は減り続けてきましたが,今は踊り場状態にあります。衝突安全技術をいくら高めても,それだけでは死傷者を減らすことはできないのです。衝突しない状態をつくる,ぶつからないクルマをつくることが,60万件という事故を減らすことにつながります。
 事故のシーンは主に,①交差点。②追い越し。③細い道でのすれ違い。④駐車。⑤合流に集約されます。この5つが解決されると,運転というのがものすごく簡単でストレスのないものになります。事故の9割以上は人間の運転ミスが原因です。いつまでも人間に頼っていたのでは,事故そのものを減らすことは理論的に不可能です。運転の基本的な要素としては,何かを見る,聞くという「認知」が初めにあります。次に,その情報に基づいて脳でこれは危険な状態であるとか,次はどうしたらいいかという「判断」をします。そして,最後にその判断結果に基づいてハンドルやアクセル,ブレーキを「操作」することになります。この「認知」「判断」「操作」において,すでに機械が人を上回り始めています。機械の優れた性能を使い,人間をサポートできる場面においては,機械にサポートしてもらった方がむしろ安全に運転できるし,我々として快適にクルマを操れる可能性があります。機械なら,急な飛び出しでも確実に感知できます。また,複数の目標を同時に認識することができます。緊急操舵回避など,素早く正確な反応もできます。このような技術を活用し,クルマの周りにシールドをはり,レーダー,カメラで安全領域を確保し,そこに危険なものがやってくると,それをドライバーに知らせ,ドライバーが反応できない状況であれば機械が介入し,安全行動を取る。そのように,クルマが人を守るという考え方を,セーフティシールドと呼んでいます。現在では,エマージェンシーブレーキや後側方衝突防止支援システム,アラウンドビューモニターなど,360度何らかの危険回避システムが利用可能な状況になっています。

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日産自動車(株) 二見 徹

1981年 東京大学 工学部電子工学科卒業 1981年 日産自動車株式会社入社 中央研究所にて車載電子システム研究を担当 1987?1990年 電子設計部にて車載電子システム開発を担当 1991年 ITシステムの企画・開発を担当 2005年 IT&ITS開発部にて企画・開発を担当 現在 IT&ITSシステム及びEV-ITシステムの企画,開発を担当 受賞暦:1999年 SAE(米自動車技術学会)最優秀論文賞受賞

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