セミナーレポート

誰にでもわかる車載画像処理 ―車の周囲を見る技術・見せる技術―日産自動車(株) 下村 倫子

本記事は、画像センシング展2011にて開催された特別招待講演を記事化したものになります。

最後は実物合わせで補正する

 2000年より前から開発をスタートさせて,こうした設計開発や実験検証を経て,初めて商品になったのが2007年のことです。2001年の東京モーターショーでは,カメラが8個付いていました。ご存じの方も多いと思いますが,カメラをたくさん付けるほど映像はきれいになります。歪みなどの補正があまり必要ではなくなるからです。当時の参考展示品は,つなぎ目がスムージングされていました。しかし現在は,原理を振り返っていただくと分かる通り,路面にマッピングしているので立体物などが現れたときに矛盾が起きるとか,つなぎ部分の明るさを合わせても決して理解しやすくなるわけではないということが分かってきました。「本物に近い画像を理解しやすいように瞬時に見せる」方が顧客には理解しやすかったので,実際の製品は参考品と違う形になったわけです。
 画像処理をやられている方はお気付きと思いますが,設計値通りにカメラを取り付けることは実は不可能です。座標変換の考え方では,仮想カメラの位置が決まっていて,実カメラの位置座標が分かっていることが前提です。しかし,実カメラを1度たりともズレないで取り付けられるかというと,そうではありません。理論的に決まった位置に決まった角度で取り付け,あらかじめ持っている歪みの補正マップを使って計算すると,だいたいズレた画像が出来上がります。なので,最後はやはり補正をしなければいけません。最初から補正するという手順もありますが,今回のアラウンドビューモニターでは,一度設計値通りに計算して,最後に補正する手順を採っています。
 補正には非常に簡単な方法を採用しています。一番重要なのは,実際の1本の線を4つのカメラで写した結果が,ちゃんと1本の線になること。それともう一つは,2メートル先に線があったら,ユーザーから見てクルマから2メートルのところにその線がちゃんとあることです。そういう観点から工場でキャリブレーションをしています。最初の設計時のパラメーターで一度座標変換をして,「マーカー」と呼ばれるキャリブレーション用の線が合うところでもう一回補正パラメーターを入れ,最後の座標変換の値を決めます。万が一,カメラが取れてしまったような場合でも,ディーラーでこうした処理ができるようにしています。こういう環境が全部そろわないと,商品として世に出せません。

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日産自動車(株) 下村 倫子

1991年,東京農工大学 工学研究科 電子情報工学博士前期課程終了。
1991年4月,日産自動車(株) 総合研究所電子情報研究所に入社。
現在,同社モビリティ研究室にて,運転支援に関する研究開発に従事(工学博士)。

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