セミナーレポート
誰にでもわかる車載画像処理 ~車の周囲を見る技術・見せる技術~日産自動車(株) 下村 倫子
本記事は、画像センシング展2010にて開催された特別招待講演プレインタビューを記事化したものになります。
使いやすくすることが狙い
聞き手:もともと,アラウンドビューモニターは後方監視専用のリアビューモニターあたりからスタートしたという理解でよろしいのですか?
下村:そうした歴史もセミナーではちょっと話そうと思っています。まずリアビューモニターがワンボックスカーの後方確認のために出て来ました。その次にサイドビューモニターというものが出てきます。これをリアビューと合わせて装備すると,スイッチを押すことでリアを見たりサイドを見たりできるようになりました。でも,駐車するときや狭いところではそれらを同時に見たくなりますよね。「じゃあ,同時に見せよう」ということで,一度で見えるようにしたのがアラウンドビューモニターです。ただ,細かく「溝があるからここだけを見たい」というときは,アラウンドビューモニターよりも単独の方が見やすいかもしれません。そこにフォーカスできるので。その場合はサイドビューだけの表示に切り替えることも可能です。とにかく,使いやすくすることが狙いです。
聞き手:全体と一部の切り替えもできるのですか?
下村:はい,できるようになっています。
聞き手:アラウンドビューモニターの用途は,1つは車体周囲の目の届かないところの監視という安全の側面と,もう1つはバックによる車庫入れのような利便性の2面があると思います。用途的には,やはり安全のためという部分が大きいのでしょうか?
下村:いえ,安全というよりもむしろ利便性が狙いですね。アラウンドビューモニターを付けたからといって事故が起きなくなるわけではないので。また,自動的に止まるわけでもありません。
聞き手:発展形として,何か考えていらっしゃるのでしょうか?
下村:最初は「アラウンドビュー」を表示するだけだったのですが,その次は駐車支援と組み合わせたシステムが実際の商品になっています。アラウンドビューモニター上で,今のハンドル角をそのままにするとどう曲がっていくのかというシミュレーションを線で表示するものです。またその次の段階としては,駐車枠に対してどのように切り返せば良いのかを自動計算してラインを書いてくれるものが,これもすでに商品化されています。
聞き手:それは便利ですね。自分も基本的に駐車は苦手ですから。
下村:一方でまったく使う必要を感じられない方もいらっしゃいますね。運転のうまい方であれば,さっさとできてしまうから(笑)。私は駐車が下手なので,非常に便利だと思いますけれども。
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日産自動車(株) 下村 倫子
1991年,東京農工大学 工学研究科 電子情報工学博士前期課程終了。1991年4月,日産自動車(株) 総合研究所電子情報研究所に入社。現在,同社モビリティ研究室にて,運転支援に関する研究開発に従事(工学博士)。