セミナーレポート

誰にでもわかる「安全・安心のための画像センシング」三菱電機(株) 鷲見 和彦

本記事は、画像センシング展2010にて開催された特別招待講演を記事化したものになります。

認証技術の発展と課題

 もう少し詳しくお話しますと,指紋というのは非常に長い歴史を持っていて,1800年代にはすでに指紋の研究が行われていました。これまでの間,いろいろな国で使われ一番実績が高い方法です。指紋にある12個の特徴点が一致する人というのは,百万人に一人しかいないといわれています。ただし,指紋がかすれていると,この特徴点が出たり消えたりして疑似信号が入ってしまい,信頼性が落ちてくることもあります。日本の指紋照合の技術は,世界一といわれています。
 最近広まってきた静脈認証は,赤外線照明で静脈を黒く浮き立たせた画像を撮影し,そのパターンの比較で行います。静脈認証のいいところは,手を差し出せばすぐにデータを取れるところにあります。先ほど,「手だったら指紋と一緒では?」という意見がありましたが,指紋に比べてそれほど解像度を上げる必要がありません。手をパッと置いた時の位置決めの精度と,取りたい特徴の密度が割と使いやすいところが,性能の高さにつながっていると思います。
 また,指紋でも静脈でも,自ら手を持っていってカメラに画像を収めています。人がシステムに協力して位置決めしていますから,横から光が漏れて入ってくることもなく,環境を完全にコントロールできているわけです。
 虹彩認証は,目の画像を撮影して虹彩部分を抽出し,ウェーブレット変換という信号処理をかけてウェーブレット係数を出します。この係数を「アイリスコード」と呼び,これを使って個人認証します。指紋照合よりもさらに高い精度を出すことができます。しかし残念なことに,目の細い日本人やそのほかのアジア人では,目をしっかりきれいに撮りにくく,利便性の問題点があります。
 顔画像の認証は,顔の検出と顔の大きさ・傾きを補正する点がキモになります。撮影距離が変わると顔の大きさも変わりますから,それも考慮して顔を検出し,おおよその拡大率を調整します。次に目の位置や鼻のてっぺん,口の中央など,いくつか特徴点を探し出して,顔の回転と縦横比を調整します。髪の毛など日々変わるようなところを除去すると「正規化された顔」が出てきますので,これを使って顔画像と比較します。2つの顔の画像の差分の中で「同一人物に関する変化」と「他人間の相違」がありますので,その成分のどちらが多いかを見分けるのが,おそらく今一番多い処理方法だと思います。
 顔の場合,正規化処理の善し悪しが認証の性能差となって現れてくるとともに,ユーザーにどれだけ協力していただけるか,窓や照明といった環境をどれだけコントロールできるかというのが,システム作りをする上で成否の分かれ目になってきます。
 現在はほとんどのシステムで,数千人から数万人ぐらいのサンプルを使って統計的に最も誤り率が低くなるような学習をさせて識別器を作るというのが主流になっています。ですから,トレーニングのデータベースをいかにしっかり作るかが,この識別器のポイントになってきます。
 ここ数年,個人情報保護が厳しくなってきたため,顔と個人のIDが結び付いた大規模の顔画像データベースを作るのは難しくなると思います。

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三菱電機(株) 鷲見 和彦

1982年,京都大学工学部電気電子工学科卒業。 84年,京都大学大学院工学研究科電気工学専攻修士修了。84年,三菱電機株式会社生産技術研究所入社。 89?90年,メリーランド大学客員研究員。90年,三菱電機株式会社産業システム研究所。97年,京都大学工学博士。2002年~,三菱電機株式会社先端技術総合研究所,そして現在に至る。03?06年,京都大学大学院情報学研究科研究員(COE)・客員教授

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