【重要】技術情報誌『O plus E』休刊のお知らせ

自分に合ったやり方で,モチベーションを維持できる方法を見つけてほしい東京大学 トム・ガリー

予定していた軌道から外れてもいい

聞き手:これから活躍を目指す若手研究者・技術者,学生に向けて,英語学習や研究に対するアドバイスをお願いします。

ガリー:まずは,英語ができるようになりたいかどうかという自覚を含めて,自分に合った勉強法を見つけることが大切です。英語の勉強の仕方を解説した本もあり,参考にはなりますが,個人差は大きいと思います。人によっては,会話やおしゃべりをすることで上達する人もいます。文章を読んで語彙を暗記して上達する人もいます。自分だったらどのような方法でどのような組み合わせで勉強していくのか試してみてください。そして,一番重要なのは継続です。忙しくなって,興味を失ってやめてしまうと,それまで積み上げてきたものがみんな無駄になってしまいます。自分に合ったやり方で,自分の仕事や生活の合い間にでき,自分が十分にモチベーションを維持できる方法を見つけてください。
 しかし,覚悟は必要です。時間はかかります。1か月とか6か月あればできるものではありません。何年も何年も続ける必要があります。そして,やめると忘れてしまいます。そこまでして英語を身につける必要がないと感じたら,始めないほうがいいかもしれません。しかし,研究者だったら,自分がやっている研究は日本だけでなく,全世界に意味があり,海外でも同じ分野の研究者が多くいるでしょうから,自分の研究を世界に発信する価値があると感じたら,英語の勉強を続ける覚悟をすべきだと思います。  研究に関していうと,研究者の多くはその分野のコミュニティに属していますし,企業では個人の業績よりもグループでの業績が重視されます。ですから,他の人たちと一緒にやっていくことに面白さを感じるのであれば,長く続けることができると思います。逆に,1人だけでやっていると,大学のときの私の数学と同じでつまずいてしまったり,興味をなくしてしまったりする可能性があります。例えば,『O plus E』を毎号丁寧に読んで,自分が興味ある研究者の記事があったら研究会に参加して,積極的に他の人たちと交流をすると,学ぶことがたくさんありますし,研究そのものに対するモチベーションも上がります。
 私の人生から言えるのは,予定していた軌道から外れても大丈夫だということです。私自身,大学院のときには,40何年後に日本に住んで日本語でインタビューを受けて,東京大学で授業をするなんてことは,まったく想像もしていませんでした。日本に来たことで苦労はありましたが,結果として,自分の人生が何倍も面白くなりました。だから,興味のあることに積極的にチャレンジし,やり続けていれば得るものがあるはずなのです。
Tom Gally

Tom Gally(トム・ガリー)

1978年 カリフォルニア大学サンタバーバラ校言語学専攻卒業 シカゴ大学大学院で言語学(1979年)と数学(1980年)の両修士課程修了 1983年 来日 1986年から2005年までは和英翻訳,英文コピーライティング,辞書編集などを本業にする。2005年 東京大学に常勤教員 2013年 東京大学大学院総合文化研究科・教養学部教授
●専門分野
言語教育,翻訳論,辞書学
●主な著書
著書『Reading Japanese with a Smile』(2007)『英語のあや』(2010)など
訳書『名随筆で学ぶ英語表現 寺田寅彦 in English』(2021)など
辞書『研究社 英語の数量表現辞典』(2007)など

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