【重要】技術情報誌『O plus E』休刊のお知らせ

シンセサイザのように光の優れた性質を自在に操り, 力を極限まで引き出し,幅広く科学技術に貢献したい。電気通信大学 美濃島 薫

光はメインプレーヤーであり,世界を変える力がある

聞き手:光の魅力を含め,光学を学ぶ学生や若手技術者に向けて,メッセージをお願いします。

美濃島:電通大は光の研究が盛んで,光を研究している女性研究者も大勢います。また,年に延べ5日間ある研究室公開では,電通大の学生だけでなく,高校生や中学生,一般の方も来ますが,光の分野の研究室が連携して公開し,光の重要性を知ってもらおうとしています。光分野はものすごくすそ野が広く,まさに光シンセサイザという言葉はそれを表しているわけですが,光が関与していない科学技術分野を探すのは難しいくらいです。しかも,単に関係しているだけではなくて,横串として根幹をなしています。例えば,ノーベル物理学賞やノーベル化学賞などの歴代のテーマや受賞者を見てみると,光に関係していないものを見つけるのは困難なくらいです。米国光学会OSAのサイトでは,歴代のノーベル賞でOSAの会員や光に深く関係するテーマの受賞者を70~80人挙げています。
 光は宇宙,地球や人類の誕生にも必須の役割を果たしました。ですから,私たちの存在そのものの根幹に光があるわけです。しかし,科学技術として考えると,大きなポテンシャルがあるのに,いまだに使い尽くせていません。私がERATOのプロジェクトでキャッチフレーズにしたのは,「光をメインプレーヤーにする」ということです。そのためには,光をシンセサイザとして,ありとあらゆる性質を自由自在に扱えるようにしたいのです。ただし,現状としては,人類は光のすべての性質を使い尽くすことはできておらず,思いどおりにコントロールして光を操る技術はまだまだ不十分です。さらに,技術を高めていき,光の力を極限まで引き出し,その性質をトータルに発揮させ,光を知的な生き物のようにしていくことができれば,科学技術のメインプレーヤーとして,様々なところに恩恵をもたらす存在になれると思っています。生き物はトータルなシステムとして様々な要素や機能がつながって成り立っています。光も同じで,多彩な性質をもっており,それを使い尽くせば幅広い科学技術に貢献できる。それだけのポテンシャルがあり,光には世界を変える力がある魅力的な分野だと思っています。
美濃島 薫

美濃島 薫(みのしま・かおる)

1993年 東京大学大学院 理学系研究科 物理学専攻 博士課程 修了。博士(理学) 1993年 通商産業省 工業技術院 計量研究所 研究官 1996年 フランス・ボルドー大学 客員教授 2000年 アメリカ・マサチューセッツ工科大学客員研究員 2001年 産業技術総合研究所 主任研究員 2007年 東京理科大学連携大学院 客員教授 2013年 電気通信大学大学院情報理工学研究科 先進理工学専攻(現,基盤理工学専攻)教授(~現在),JST ERATO美濃島知的光シンセサイザプロジェクト 研究総括(~現在)
●研究分野
光コム,超高速光科学,精密計測
●主な活動・受賞歴等
2008年 科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞(研究部門)
2010年 応用物理学会 第1回女性研究者奨励育成貢献賞(小舘香椎子賞)
2011年 日本学術会議連携会員(~現在)
2011年 CLEO国際会議実行委員長
2013年 レーザー学会論文賞
2013年 文部科学省 科学技術・学術政策研究所 科学技術への顕著な貢献2013(ナイスステップな研究者)
2014年 応用物理学会フェロー表彰(応物フェロー)
2015年 OSA Fellow表彰 アメリカ光学会( The Optical Society)
2017年 レーザー学会上級会員
2018年 レーザー学会理事
2019年 応用物理学会理事
2019年 2019 Hermann Anton Haus Lecturer, RLE, MIT

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