【重要】O plus E 隔月刊化と価格改定のお知らせ

1つステップを超えるには大きな目標を一緒になって苦労を分かち合う仲間の存在が重要東京工業大学 大山 永昭

足りないところを徹底的に追いかけると突破口がある

聞き手:大山先生がやっていらっしゃるのはこの全体でしょうか?

大山:そうです。すべての課題でリーダー的な役割を担ってきました。本質の問題というのはじっくり考えてみればちゃんと道が見えてきます。何が本当の障害なのかというのを,一つ一つつぶしているという感じですね。

聞き手:量が多いだけでなく,いろんなパターンがあるので大変ですよね。

大山:そうです。だから,1人ではとても無理です。問題点を明らかにして,解決策を考えるのが私のチームの研究です。なので,私たちの研究センターは社会課題解決を図るソリューション研究を行っています。
 他の研究活動としては,政府の情報システムの調達手法の改善を通して,年金記録システムや特許庁の情報システムの刷新手法について,直接アドバイスをしています。これらの件については,機微な情報が含まれること,および政府調達であること等の理由により,既存の研究のように得られた成果を論文にまとめて発表することができないという問題があります。そのため,必然的に学生さんの研究課題にするのは困難になります。本来は政府の調達改善を研究する部門があっても良いと思うのですが,まだどこの大学にも設置されていません。
 話を医療に戻しますが,昨年度,医療用の全国ネットを作るために専用のIXを総務省と3師会等と協力して構築しました。最初は小さく作って,容量を増すには同じものを使う,いわゆるスケールアウトを行うことで対応しようと考えています。先ずは,全国ネットがなければできないアプリケーションに価値が出るかで,費用対効果を考えます。
 この観点から,もっとも有望なのが家庭の残薬問題の解決です。残薬についてはいろんな試算があり,100億から6,000億という幅があるので実態はよくわかりません。ですが,重複処方や併用禁忌は避けるべき課題であることは分かっています。同じようなことは,お薬手帳でも原理的にはできますが,ここでの話は電子お薬手帳の機能を拡張しようとするものです。すなわち,処方,調剤に加えて,在宅療養等における患者さんの服薬に関する情報も,必要に応じて調剤にフィードバックさせる手法です。この手法では,調剤する薬剤師による処方医への疑義照会を介して処方情報を変更するため,節約された費用が出てきます。これにより処方せんを電子化して個人別に管理することにより,費用対効果を明らかにしようとしています。
 電子処方情報はテキストデータで,それをIXに接続される管理サーバーにアップロードします。この情報はもちろん,患者さんのJPKIに紐付けます。このサーバーには,すべての電子処方情報が集まるので,個人別に重複や併用禁忌をチェックできると期待されます。また,この4月から疑義照会による処方せん変更には,30点の保険点数がついています。処方せんの話は,解決の糸口を見つけた1月から始めて3月までに大枠ができました。このシナリオなら,価値が生まれると予想される状態です。今まで研究開発してきたIX,HPKI(Healthcare PKIで医療従事者の資格がついている),JPKIなどが積み上がっているからできるわけです。

聞き手:それはやりがいというか,楽しいといったら変ですけれども。

大山:楽しいとともに,やりがいを感じるようになりました。やっと,ここまで来たなと実感しています。それを次に進めるには何が足りないかというのも見えてきます。そこを徹底的に追いかけると糸口が出てくるようです,突破口があるのです。それが駄目だったら他の角度から見ます。
 マイナンバー法はもともと少子高齢化に伴う,歳出歳入のバランス改善を目的にしています。歳入は国税で,歳出は社会保障が最も大きくなっています。歳入には一定程度の効果が予測されますが,社会保障については効果的な道が示されていません。
 先ほども触れたように,3師会とMEDISと協力して,総務省の予算により医療用の全国ネットにつながるIXを構築したので,地域,系列,医療業種を超えた医療情報の共有ができるようになっています。もちろん患者さん本人の同意が大前提です。
 現在,レセプトオンラインで23万ぐらいの医療関係の組織があって,そのうちの11万強がネットワーク接続されています。ネットワークにつながっていない医療関連機関は,レセプトデータの入力を他機関に委託しているところもあります。ですが,ネットワーク接続している医療機関を基金に代えてIXに接続し,基金もIXに接続にすれば,11万以上の組織が双方向に通信できるようになります。
 現状,医療機関の中には,レセプト用のネットワーク,特定疾患用のネットワーク,系列病院間のネットワークと,契約を複数していることがあります。もちろんセキュリティの観点から多くの場合,端末も別になっています。経費を節約するためにも,これらを集約できる安全なネットワークが必要となりました。残りの12万弱が依然としてつながらないので,ここはセキュリティのレベルを上げた無線が使えるかどうかを含めて,全組織の接続を検討するのが次の計画です。
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大山 永昭

大山 永昭

●大山 永昭(おおやま ながあき)氏 ご経歴
1983年 東京工業大学 像情報工学研究施設 助手 1988年 東京工業大学 像情報工学研究施設 助教授 1993年 東京工業大学 像情報工学研究施設 教授 2000年 東京工業大学 フロンティア創造共同研究センター 教授 2005年 東京工業大学 像情報工学研究施設 教授 2010年 東京工業大学 像情報工学研究所教授 2016年 東京工業大学科学技術創成研究院教授 現在に至る
●研究分野
医用画像工学,光情報処理,社会情報流通システム
●主な活動・受賞歴等
1995年 科学技術庁長官賞 1997年 通商産業大臣表彰 2000年 郵政大臣表彰 2005年 総務大臣表彰 2010年 文部科学大臣表彰 科学技術賞(研究部門)

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