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実験屋はシミュレーションを過信せず,実験結果に真摯に向き合ってほしい富山県立大学 野村 俊

ホタルイカは,自作の照明系でたくさん集まる

聞き手:お休みはなにをされて過ごされていますか?

野村:色々です(笑)。釣りが好きで入浜権を購入しようかとも。ホタルイカを自作の照明系を持って新月の風のない夜に富山湾に出向き,バケツ数杯も獲ってきて,家内に怒られたりしています。
 照明系の光源はLEDを使っています。LEDの出始めの時は,価格がとても高かったのですが,東京で学会があったときに秋葉原で色の違うLEDを買い集めては実験を繰り返すうちに,ホタルイカの感覚器は,ある波長に良く反応することがわかりました。しかし,その波長で照らすとホタルイカを透過してしまい(散乱しないので),人の目にはホタルイカがあまり良く見えません。また,その波長だと遠くにいるホタルイカはある程度近くまで寄せることができるのですが,すぐ近くには寄って来ません。そこで,遠方を照明する光の波長と近くを照明する光の波長を変えています。電源もLEDだから,小さなバッテリーで十分です。具体的な波長については,企業秘密です(笑)。たくさんの方が,県外からホタルイカを取りにいらっしゃいますが,まるでイカ釣り漁船のように発電機を唸らせて,煌々と海面を照らしています。最近はハイパワーのLED照明装置が安価に販売されているので,それを用いている人も増えてきましたが,私の照明系のほうが,ホタルイカがたくさん集まってきます。この成果は真似されては困りますので公表していません(笑)。
 山菜採りも好きなのですが,最近はクマが出るので,家内から入山禁止令が出ています。いつ頃,どこへ行けば,何が採れるのかをノートに記載しています。何十年ものデータの蓄積があります。行けば持ちきれないほど採れるのですけどね・・・。
 それから,大学生の頃,映画館の音響技師の方に,真空管アンプの手ほどきを受け,それ以来,たくさんの真空管アンプを作りました。アンプ以外にも,スピーカーボックスをいろいろと手作りしました。薄い板を張り合わせて,曲面を持ったホーン型のスピーカーも作りました。
 オーディオの趣味は,光測定を行うときの信号処理回路を自作するのに大変役に立ちました。アナログ回路は,いろいろなノウハウがありますので,趣味と実益を兼ねることができました。こういった趣味のおかげで,真空管アンプを学生に作らせたこともありました。このときは,ケースも板を折り曲げて,スポット溶接して組み立てたりしました。こういうのは,音楽が好きで,はんだづけをしたこともある,機械系の学生でしかできないのではないでしょうか。
 20年前になりますが,トランス屋さんと知り合う機会があり,トランス巻きの弟子入りをしました。残念ながらトランス巻きの師匠が廃業することになり,手動式のトランスを巻く装置をいただいて,今では,オリジナルのトランスも作れるようになりました。
 モノづくりに関連して,自宅を建てるときにも,図面は自分で引きました。納得できる家を作ることができましたが,規格外の寸法で設計したおかげで,いろいろと高くついてしまいました(笑)。

「ものつくり」は失敗したときに,考えてなんとかすることが重要

聞き手:「ものつくり」に関しては,どのように学生に接してこられたのでしょうか。

野村:私が大学で働き始めて退職するまで,学生には自らの手を動かして物を作る経験をするように指導してきました。自分で色々作ってみて,上手くいくだけでなく,失敗したときに色々考えてなんとかしていくことが大変重要だと思います。
 これは機械系の学生だけでなく工学部に属する学生すべてに言えるのではないかと思います。旋盤を使って機械部品,はんだごてで電気回路を作って学生実験や卒業研究に使う,これが重要です。
 富山県立大学の「ものづくり」に関する実践的な教育や研究支援の拠点として,平成14年4月に,機械システム工学科の松岡信一教授とともに「パステル工房」を設置しました。
「パステル」というのは,顔料等を棒状に固めた乾性絵具の一種で,幼稚園や小学校で絵を描くときに誰もが使った思い出があります。この名称は,子供が白い画用紙に向かって好きな絵を描くように,柔軟な頭脳,自由な発想で「ものづくり」に取り組んで欲しいという思いを込めたものです。
 実践的な人材の育成に努めるとともに,地元企業や工業技術センター等との産官学共同研究の場としても活動するとし,私は企画管理運営委員会の委員長として県内企業を奔走しました。ですが残念ながら上手くいきませんでした。
 ものづくり研修会やモノヅクリ・コンテストの提案をして実施しました。優勝したのが自分の研究室の学生だったのが嬉しかったですが,手前味噌に感じたのを覚えています。
 それから,身の回りのものを学生に渡して,とにかく分解させ,装置の中身をレポートさせるということもしましたね。昔の子供は遊びで経験済みですが,最近の学生はそのような経験がないので,授業の一環として体験させるようにしました。「写ルンです」の分解もやらせたことがあります。フィルムの湾曲も含めてレンズ設計しているとか,使い捨てのものではなくリサイクルしているなどと話し合いました。
 ものづくりから少し離れますが,大きなケミカルコンデンサーをロケットのように飛ばして天井にぶつけた,なんてこともありました。更に過激に,耐圧を超える電圧をかけ爆発させるくらいのことまでしたかと・・・。こういうダイナミックな実験は,学生には好評でした(笑)。
 これは学生だけでなく,企業の若い技術者も物づくりの経験がないという点では共通していると思います。
 そもそも,「ものつくり」に興味を持たせること自体が難しいですね。色々なことをしているからこそ,普通では考えられないことを実際に行わなければならないことに遭遇するわけです。

東京都立科学技術大学でのオンマシン・ゾーンプレート干渉計による球面鏡の形状測定の様子


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野村 俊

富山県立大学 野村 俊

●野村 俊(のむら・たかし)先生のご経歴
1950年 富山生まれ 1973年 富山大学工学部生産機械工学科卒 1975年 富山大学大学院工学研究科生産機械工学専攻修士課程修了 1975年 吉田工業㈱ 1976年 富山県立技術短期大学機械科助手 1981年 富山県立技術短期大学機械科講師 1989年 富山県立技術短期大学機械科助教授 1990年 富山県立大学工学部助教授 2001年 富山県立大学工学部教授 2016年 同大学退職 2016年 同大学地域就職アドバイザー 現在に至る
●研究分野
計測工学,機械力学
●主な活動・受賞歴等
1973年 日本機械学会畠山賞 1996年 とやま賞 2006年 日本機械学会学会賞 2006年,2008年 先端加工学会論文賞 2015年 精密工学会沼田記念論文賞

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