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異なる分野の連携が難しいのは目指すものが違うから東海大学 山口 滋

連携をとることが本当の意味でのグローバル化

山口:連携をとるということは,違うアプローチの仕方,違う言語学を持っている人たちが寄り集まって仕事をするということですから,連携をとること自身が本当の意味でグローバル化につながることだと思います。同じような研究をしている人たちが集まるのではなく,価値観の違う研究がお互いに利用しあうことで,新たなものを生み出すことを考えてもらうのが,私が目指している連携でして,同じ分野,例えばレーザーをやっている人同士でというのは,あまりこれは連携とは言わない,それは1つの分野のものであると思っています。
 今までレーザーが入っていなかったところにレーザーが連携していくことが大事だと思うのです。例えば,薬でさまざまなウイルスを捕まえる研究で,ウイルスの形とか,タンパク質の形を研究されている方と,レーザーを使ってナノ材料をつくる研究者で組んでもらうと,利害はたくさんあり,かつ目指すものは同じでも,アプローチがみんな違うのですよ。そこから新たな知見を得てもらうことが大事なところなのです。
 ここは確率論的なところがありまして,出会いの場を多くしないとそうならないのです。変に公募とかボトムアップでしてしまうとなかなか効果があらわれない。ボトムアップですと,分野の壁を越えられないのでいつになっても融合しないのです。
 そこで,無理やり全然違う研究をやっている人を学内で招聘して,無理やりマッチングをとるということも今進めています。
 東海大学ではいろいろな再生エネルギーの研究を行っており,かなりな研究者の集積があります。そこでこれまで独立で行っていた研究に対して,学内で無理やりチームを組ませるために,2チーム一緒にならないと研究費を出しませんよというような,学内でいろいろ協力を行うとメリットがある研究費の出し方をしています。ここから大きな産学連携に結びつくようなテーマが育てばよいと思っています。
 また,いままでは研究テーマごとの予算は,先生とある程度の学生さんがいれば出してきましたが,これからはそういう出し方はしないで,少なくとも複数の指導教員,最低3人ぐらいが集まって,研究費を申請してくださいと。あるテーマとは言いつつも,テーマが融合して,新たなものを生むような形にしないものは,補助しませんという,そこまで強くは言っていませんが,チームを組んでくださいねということを主に,新しいものを生んでくださいというニュアンスのアナウンスをして連携が起きるよう模索しています。
 医と工でも同様のことをしています。ただこれには研究のスピードがある程度合わないといけませんから,スピードが整合している医学の基礎系と理工学で行っています。
 チームを組まないと次のステップへ進めないような形をとり,さらに新たなものをつくってくださいというように,1人ではうまみの少ない形をつくりました。ただ,うまく他人と組めない人の中にも優秀な人はいますから,その人をフォローすることも忘れずに横串を刺して行きたいと考えています。
 教員の方にも勉強していただいて,連携をするということを早くから身につけていただくということは大変大事なように思います。ただやはり難しいところで,若いうちにしておかないと難しい。
 大学で研究だけをやってきたという人は,よほど視野を広げないと厳しいですから,若いうちから別の連携の仕方,マネジメントの仕方というのを実践しないといけない。そのための体制をつくってなければいけないと思います。
 これはグローバル化の概念と強く関係していると思っていまして,こういう連携ができる人というのは,グローバル化も十分に受け入れられると思います。要するに違う言語を常に受け入れていくということが連携の基本ですから,連携ができない方というのはグローバル化には向いていないと私は見ています。
 私は25年前にアメリカの大学に2年間ほどおりましたが,そのころからアメリカの大学はそのようにやっていたように思えました。1つの研究室ではなく,工学部の電気の研究室が,理学部の化学の研究室と連携するとか。化学と電気は関係がないように見えるかもしれませんが,レーザーをつくるということから考えると,そこには化学反応が大きく関係しますから,そのサポートに横串を刺していて,それがユナイテッドテクノロジーに2つの研究室合同で出ていくとか,そういうことが普通に行われていたように思います。
 今の35歳手前あたりの研究者の評価というのは非常に透明性が高くなっています。ですから,大学の研究へと入っていける方には,自分の専門分野と論文数が十分にあるだけでは足りません。そこで求められているのはグローバルな視点ですが,ただ単に英語ができて,プレゼンテーションがよくて,海外での発表ができて,海外の研究者とやりとりができるというのは,グローバル化の初歩であって,真のグローバル化というのは,他言語,すなわち異分野を理解し受け入れられるかどうかです。海外でやってこられたという方の中にも,実は自分の殻から出ていない方というのはいっぱいいらっしゃいます。これは幾ら外でやってきたといっても,グローバル化をしていません。真のグローバル化というのは,他言語,すなわち異分野の研究を受け入れて,自分の中に有機的に融合できるかどうかなのです。

専門分野のことだけ深めても世の中は認めてくれない

聞き手:最後に光学分野の若手技術者や学生などに向けてメッセージをお願いします。

山口:そうですね。25年ぐらい前に比べると,光でやれるところというのはものすごく広がったと思います。特に光ファイバーの系統をはじめとして,机の上ですぐに組める,苦労なくいろんなことができるようになってきたと思います。でも残念なことに,これはいいオプティクスが得られるという波長帯は,どうも昔より狭まったのではないかと思っています。安く多く買えるようになったので,ある一部しか見ていないからかもしれないのですが。
 あと,ビッグサイエンスは,根本の原理だけを見ているだけだというのですが,実は根本の原理のところをもう一回皆さんよく見てほしいのです。
 理論ができて,使えるようになるまでには30年ぐらいかかっています。その原理は電磁気の原理にかなり制約されている。だから,それを打ち破るものはないのか。例えば,電磁気の原理は音波からは遠いように見えるのだけれども,波の原理は同じなのだから,音波を捕らえるようなもので光を捕らえるというのは,なぜ今簡単にはできていないのだろう,なぜできなかったのだろうと深く考えていただきたいのです。
 あらためて若い人たちに申し上げたいのは,私は光の研究者だから,この分野のここしかやらないというのでは新たなものは絶対に出てこない。要するに違う分野のところへ行って,似たことをやってないのかどうか,あるいは全然違う原理があるのかどうかということを探求してほしい。
 そういうことがないと,全く新たなものは生まれてきませんから。例えば,素晴らしくよく見える顕微鏡ができた。今まででは見えないものが見えるようになった。その上で何ができるのか,だから何をやろうとしているのか,そのことをコストも考えながらやってもらいたいですね。
 最後はコストのことを気にしない人が多いかと思いますが,例えば医学分野と連携をするならば,コストと時間は強く意識しなければいけません。
 そしてその一分野だけで解を見つけてほしくない。自分の枠からはみ出ようとすると,専門性がなくなるのではないか恐れる人がいっぱいいますが,それは逆で,幅を広げることで,専門性はさらに深くなるはずです。それを恐れないでトライをしてほしい。専門分野のことだけ深めるということをやっても,世の中は認めてくれないと思います。
山口 滋

山口 滋

●山口 滋(やまぐち・しげる)先生のご経歴
1981年 慶應義塾大学工学部卒業 1983年 慶應義塾大学大学院理工学研究科修士課程電気工学専攻修了 1983年 石川島播磨重工業㈱入社 航空宇宙事業本部光プロジェクト部にて高出力炭酸ガスレーザーの研究開発 1989年 米国ライス大学量子工学研究所交換研究員,高出力エキシマレーザーの研究 1991年 石川島播磨重工業㈱に復帰 レーザー精密加工装置の開発,レーザー計測機器の開発に従事(電力,製鉄会社等に製品納入) 1993年 博士(工学)(慶應義塾大学)取得 1997年4月 東海大学理学部物理学科助教授 レーザー共振器の理論解析,レーザー計測・レーザー診断・微量物質検出の研究に従事 2003年4月 東海大学理学部物理学科教授 2005年4月 同大学院理学研究科物理学専攻主任教授 2006年4月 同理学部物理学科主任教授 2011年4月 同大学院総合理工学研究科研究科長 2015年4月 同研究推進部部長 及び産官学連携センター所長兼務
●研究分野
物理学一般,物理計測・光学,分離・精製・検出法

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空と偏光

2020.03.25

空と偏光

東京工業大学 松谷 晃宏