【重要】技術情報誌『O plus E』休刊のお知らせ

光学は中核になる人間の技術力をどう上げるかが鍵株式会社ユーカリ光学研究所 代表取締役 油 大作

「想像・勇気・忍耐」そして「継続は文化なり」

:弊社ではモットーとしていることがあって,開発技術屋としての必要条件として,新しくしたホームページに「想像・勇気・忍耐」と入れました。社是に入れていたら,「これは社是と言わないのではないでしょうか」と言うから,「いや,いいよ」と言っています。
 まず「想像」は,「クリエーション」ではなくて「イマジネーション」です。「想像」というと,新しく物を作るので「クリエイト」ではないかとよく言われます。私は,開発という仕事は,ものすごく大事な仕事だと思っているのです。何か物を開発しようとしたら,開発する前後左右など,すべてのものをイメージしてやっていかないと,いい開発ができないということです。どういう人が使って,どういう使い方をするということや,それをたくさんの人に使ってもらうためには適当な安い値段にもしなければいけない。そのためには加工法まで考えなければいけない。つまり,すべてに通じていないとできないのです。だから,しょっちゅう頭の中でイマジネーションするというか,シミュレーションすると言ったほうがいいでしょうか。それを常にやって,先の先まで読んでいかないといけないのではないかなと思います。そうしないと,本当の開発はできないと思います。
 2番目は,「勇気」です。開発屋として要請されるのは,チャレンジする勇気が必要で重要だと思います。50:50だったら,とにかくやってみるしかないだろうというのが,私の考え方なのです。
 3番目は「忍耐」です。どうも日本人の悪い癖で諦めやすいのですよね。やってうまくいかなかったら,すぐにパッと切り替えてしまう,それはそれでひとつの方法ですが,やって駄目なら,もう1回やろうというしつこさが必要だろうと思います。
 たとえば,当社製品の赤外のMTF測定器は,開発してから何と10年を越えたのです。やっとここへ来て,陽の目が当たってきているのですよ。私は自分でも,よくぞここまでもちこたえてきたと思います。
 ですから,この3つをやっていかなければいけません。それから忍耐と共通しているのは,継続だと思うのです。「継続は力なり」と言いますが,私はもうひとつ進んで「継続は文化なり」と思っています。改革するときは改革すればいいのですが,続いてきたものは大事にすると,続けているだけで,力が出てきます。それが,私は文化そのものだと思います。
 うちの場合には,光学メーカーのレンズ設計部門というのではなくて,いろんなお客さんが,どういう手法でやったらいいかと困って行き所がなくていらっしゃいます。どこへ行ってもちょっと話を聞いては断られたという人がわりに多いのですよ。そうすると,うちでも断ったら,もう行き場が多分ないですよね。ですから,「一緒に考えましょう」と親身になってやっています。そうすると,光学的な基礎が今までにないから,やっぱりというか,そこだけが抜けているのです。「光学的な処理をすれば,ものすごくシンプルにこのシステムはできますよ」という話をして,それでお客さんが救われるというケースが多いです。担当者がそのまま帰って部長からまたどやされるのだったら困るでしょうから,うちで何かプレゼンの資料を作ってあげますよという取り組みなのですね。そういう意味で,うちの会社の存在意義というのは,言ってみれば「お客さんの黒子」ですよね。決して表に出ることはありません。
 うちに仕事を出して損したと思われたくないので,役に立つような形でやります。でも,人間ですから,なかなかそう簡単には信用してくれないところがありますからね。でも,おかげさまで,それが実って,非常に忙しい思いをさせてもらっています。

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油 大

油 大作(あぶら・だいさく)

1936年 石川県出身
1959年 金沢大学理学部物理学科卒業
1959年 (株)三協精機製作所入社
1964年 (株)保谷硝子入社
1967年 東京光学機械(株)入社
1980年 (株)ユーカリ光学研究所を設立

●(株)ユーカリ光学研究所について
(株)ユーカリ光学研究所は1980年創業。光学機器の試作開発会社として,35年の長きにわたり,カメラ,望遠鏡,顕微鏡,赤外線,紫外線,可視光線と,用途や大きさの大小にかかわらず,さまざまな試作・開発に携わった経験をいかし,専業メーカにはない独自のノウハウを保有している。本質は光学専門のコンサルティングとしているが,商品開発から設計,試作まで自社一貫作業が可能であり,凸レンズ1枚から衛星搭載用光学装置まで対応可能な「受託開発」をはじめ,「試作サービス」「測定サービス」「設計サービス」のほか光学技術,開発コンサルティングや光学技術者受託教育も可能な「出張セミナー」など多彩なサービスを提供している。
webサイト http://yucaly.com/

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