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光学は中核になる人間の技術力をどう上げるかが鍵株式会社ユーカリ光学研究所 代表取締役 油 大作

基礎技術力を上げるため企業人教育はものすごく大事

:私は大学を卒業してから,ずっと光学設計の畑だったのです。会社をいくつか変わりましたが,これまで失業保険をもらったことがありません。というのは,日本中に一人前の設計者というのは,10人,20人と指折り数えるぐらいしかいなかったのです。あの時代の設計者は,横のつながりが強かったのです。今でも皆さんとよく会いますし,1つの設計というのは,ある1つの専門の職種だったのですよ。要するに,希少価値があったということなのでしょうね。だから,辞めるころには,次にどこで働くかもスムーズでした。
 その後,計算機がどんどん発展して,誰でもやれるようになったのです。それはそれで非常に結構なのですが,私が危惧していることでもあります。仮に,設計が出来上がっても,それは設計者自身が作った設計ではなくて,ソフトとパソコンが自動的に作った結果なので,人間が開発設計者としての思想を全部捨ててしまったことになります。ですから,技術屋的には,非常に面白くない作業になってしまいます。
 私はそこを何とか元へ引き戻したいというのが,念願だったのです。ですから,この会社を立ち上げて,あるセミナー会社とタイアップして,「光学技術講座」という通信講座を開いています。今は「光学技術の基礎講座」と「光学技術の中級講座」の2つがありますが,今でも受講する人が増えているのです。
 ある大手の会社からは,毎年50~60名という受講生が入ってきます。底辺のレベルを上げていくのは,メーカーとしての必須の事項だと思っているのですね。ほかにも,ある光源のメーカーさんでも毎年何十名と団体受講してもらっていて,お得意さんなのですが,社内の人材養成のための能力向上,キャリアアップのための「電子工学の基礎」とか「ソフトの基礎の何とか」という技術的な通信講座の中で,3年間の実績の累計で弊社が第一位になったと連絡を受けたことがあります。
 ですから,私はそれなりに役に立っていると思います。技術的なセミナーというのはいっぱいありますけれども,半分以上は失望感があるとアンケートに書かれています。なぜなら,最先端のことは,ほかには喋りたくないから,1段か2段,落として喋るわけですよ。それでは,聞いても面白くないわけです。私が言っているのは,そこではなくて,もっと底辺の中核になってきている人間の「基礎技術力」を上げるべきだと思います。
 ですから,弊社は,最初,コンサルタント業務で会社を起こしたのですが,そのときに常々,私は1人でなくて複数で来てくださいと言っていました。1人マスターして,かなり光学が読めるようになっても,社内へ帰ったら,1人では絶対に潰されてしまうからです。
 ある光電機器企業メーカーでは,1人主任を出して,その周りに主任の補助クラスで5人ぐらい常時来て,グループで受けに来ていました。会社でCDピックアップのラインを立ち上げるときに彼が中心になって,ものの見事に成功しました。事業所からは,会社をM&Aにかけたみたいな気分だと言われましたけれど,そのぐらい円滑にいった例もあります。
 企業人教育というのは,ものすごく大事だと思うのです。ですから,その辺の力を付けていかないと,今の日本の産業界がいろいろ沈んでいるのは解決しないのではないかなと思いますね。

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油大作(あぶら・だいさく)

油大作(あぶら・だいさく)

1936年 石川県出身
1959年 金沢大学理学部物理学科卒業
1959年 (株)三協精機製作所入社
1964年 (株)保谷硝子入社
1967年 東京光学機械(株)入社
1980年 (株)ユーカリ光学研究所を設立

●(株)ユーカリ光学研究所について
(株)ユーカリ光学研究所は1980年創業。光学機器の試作開発会社として,35年の長きにわたり,カメラ,望遠鏡,顕微鏡,赤外線,紫外線,可視光線と,用途や大きさの大小にかかわらず,さまざまな試作・開発に携わった経験をいかし,専業メーカにはない独自のノウハウを保有している。本質は光学専門のコンサルティングとしているが,商品開発から設計,試作まで自社一貫作業が可能であり,凸レンズ1枚から衛星搭載用光学装置まで対応可能な「受託開発」をはじめ,「試作サービス」「測定サービス」「設計サービス」のほか光学技術,開発コンサルティングや光学技術者受託教育も可能な「出張セミナー」など多彩なサービスを提供している。
webサイト http://yucaly.com/

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