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大学の先生になったら,絶対ちゃんと教育するぞと思っていた
学生は場さえ与えれば自分で育つところがすごいと思った科学技術振興機構 研究広報主監 佐藤 勝昭

絵画が体の一部なのは,サイエンスと同じ

聞き手:個展を開かれるなど,絵画でもご活躍されていますが,はじめられたきっかけなどお聞かせください。

佐藤:私は,小さい頃から絵を描くのが好きで,いつも絵を描いていました。私の母親が,学生時代にアトリエに通っていました。結婚してやめてしまったのですが,それを子どもに託すところもややあり,小さいころから大阪市立美術館などいろんなところに連れて行ってくれました。ゴッホの「夜のカフェテラス」を初めてみたときの印象はいまだに覚えています。それから,小学校3年から伊藤継郎先生の児童画教室に通い,5年生で油絵を始めました。
日本のスケッチから「東京都美術館から見たスカイツリー」

●日本のスケッチから
「東京都美術館から見たスカイツリー」

 小さいころからやっているので,絵の具の何と何を混ぜたらどんな色がでるとか,この色がどういうふうな感じなのか,下に塗るとどうか,体で覚えているのです。頭で覚えているのではなくて,体の一部なのです。

聞き手:体の一部とおっしゃるところは,電気と同じように実践なのですね。

佐藤:そうです。だから将来絵描きさんになろうとは思いませんでしたが,生活の一部になっています。「いいな」と思ったら描く,「きれいだな」と思ったら描くとか。絵にしたいなという,自分の好奇心です。でもそれはサイエンスと通じるところがあって,論文の見せ方とも同じです。論文に,何もかも書いてあったら読む気がしないですよね。ところが「へそ」がちゃんとあって,その「へそ」を示すために附帯的なものがちゃんと並べてあると,非常に読みやすいです。それと同じなのです。絵も「へそ」があって,周りのものがその「へそ」をちゃんと引き立てるように持って行くという感じが。
世界のスケッチから「凱旋門」

●世界のスケッチから「凱旋門」

 研究費の取り方について講演をたのまれることがよくあるのですが,「自分がいっぱい研究したというのは分かります。ですが,この提案のためには何をやる,昔やったことがどう役に立っているかについて書く必要があるよね」という話をします。
 JSTでは,広報担当者を集めて文章力講座を行います。JSTの職員は,研究者と国民の間に立つ人として採用されているわけですから,国民目線で研究者の言葉を翻訳して感動を伝えようと言っています。
植物のスケッチから「ヤマユリ」

●植物のスケッチから「ヤマユリ」

 だから,研究者の書いた感動の伝わらない紋切り型だったり,取り付く島もないプレスリリースの原稿を見ると目が点になります。どこを見ても分からない言葉が並んでいて,研究者というのは,本当に世の中のことが分かっていないなと思うことが多いです。私たちはそのリリースをプレスの人たちも分かる,そして面白がるように書いていないとだめなのです。そのためには,どういう価値があるのか,「ネイチャー」に載ったといっても,こういうところからこうなったから載るのだな,ということに対しての説明が必要なのです。何を求められて,何を解決したのかとか,その結果未来に何が起こるのかとか。私はあらゆるものにおいて,何でも読む人,見る人のことを考えた上で文章にするのが,共通のことだと思います。

光ならではの可能性が広がるようにしていかないといけない

聞き手:光学分野の若手技術者や学生に向けて,光学分野の面白さやメッセージをお願いします。

佐藤:私は光物性の専門家です。光物性というのは,電子構造とかいうところと関連して光でそれを見るということになります。その光もいろいろあって,テラヘルツの赤外光から放射光のX線レーザーまで含めて,光というのは非常に広いわけです。私はSPring-8関係のプロジェクトの審査をやっていますが,いろいろな切り口があって,光というのは可能性が非常にあると思います。特に最近はアト秒ぐらいのレーザーがいろいろなことに使えるようになってきて,非常に早いプロセスをきちっと見れるとか,短いパルスで物が壊れない間に測定できるとか。そういう意味では,光ならではのいろいろなことがあると思います。今年は国際光年ですから,文科省の戦略目標に5年ぶりに光が入りました。せっかくこれだけ日本の光技術の最先端とか言っているのに,必ずしも継続されないというのは非常に悲しいですから,それをできるだけつなげていけるといいですね。
 ただ,光屋というのは深い所にどんどん行ってしまって,広がりを持とうとしないところは,よくないですね。せっかくの道具をいろいろな人に使ってもらえるようにしていくべきです。今ニーズがあるのはライフ系の計測の分野ですが,そこで誰でも簡単に使えるようにしていかないといけないと思うのです。ユーザーとコミュニケーションを持つことによって,光の応用範囲が広がってくるわけです。例えば,今はX線で何でも見ていますが,赤外線などを使えば放射線の障害がなく,体の中をかなり丁寧に見ることができます。今の技術を使えば必ずできますから,そういうところにはチャレンジをしてほしいですね。ユーザー目線というか,出口目線をもう少し持った方がいいと思います。俯瞰して非常に広い目で見て,専門分野だけでなくそこから違うところでも使えないか,いろいろなところからニーズを引っぱってくることが必要だと思います。
佐藤勝昭(さとう・かつあき)

佐藤勝昭(さとう・かつあき)

1942 兵庫県生まれ 1966 京都大学大学院工学研究科修士課程 修了 1966-1984 NHK(日本放送協会)勤務 1978 工学博士(京都大学) 1984-2005 東京農工大学 2005-2007 同理事副学長(教育担当) 2007東京農工大学名誉教授 2007-2010東京農工大学工学府特任教授 2007-2013科学技術振興機構(JST)「革新的次世代デバイスを目指す材料とプロセス」研究総括 2007-2012 JST基礎研究制度評価タスクフォース(兼務) 2008- JST研究広報主監 2010- JST研究開発戦略センター(CRDS)フェロー(兼務)
●研究分野
磁気光学,半導体光物性,近接場光学,結晶工学,高温超伝導,磁性体ナノ構造
●主な活動・受賞歴等
2015 応用物理学会 業績賞(教育業績) 2014 日本結晶成長学会 貢献賞 2007 応用物理学会 フェロー表彰 2003 日本磁気学会 業績賞 2003 応用物理学会 JJAP編集貢献賞 2001 日本磁気学会 論文賞 2001 Int. Superconductive Electronics Conf. 2001 (ISEC'01) Excellent Poster Award 2000 Materials Research Society Best Poster Award 1997 日本磁気学会 出版賞
●画歴
1950-1954 小学生時代, 伊藤継郎(新制作)の児童画教室に学ぶ 1953から油彩をはじめる 1957-1960 大阪府立北野高校で美術選択 岡島吉郎(国画会)に学ぶ 1968-1984 NHK技研美術部で樋渡涓二(日府展前理事長)に師事 1970日府展に出品。中島哲郎に学ぶ 1974 ぎゃらりー渋谷で第1回個展 1978-2001銀座詩季画廊で個展(第2回?10回)二人展3回開催 現在 一般社団法人日本画府理事(洋画部審査員) 日府賞,記念賞,愛知県知事賞等受賞 2007- 麻生区美術家協会事務局長,麻生区文化協会総務 2008- アルテリッカ新ゆり美術展実行委員長

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