【重要】技術情報誌『O plus E』休刊のお知らせ

光は誰をも惹きつける 楽しそう! 面白そう! を広げてみるサイバネットシステム(株) 執行役員 西郡 恵美子

バックグラウンドがなく不安だった

聞き手:今まで働かれていて求められた成果が出ないなど,自信を喪失されたり試行錯誤して苦悩された苦いご経験がありましたら,ぜひそのエピソードをお聞かせください。

西郡:技術職ではありましたが,学部卒の理学部出身ということもあり,私には,大学で実験をした経験やものづくりに携わったことがないという大きな欠点がありました。つまり,すべて机上/バーチャルの話になるわけで,将来を考えても自分自身心もとない不安感に襲われた時期がありました。技術サポートをするにしても,委託業務をお受けするにしても,根拠となる背景をもたないというか,地に足がついていないというか。お客さまに『ありがとう』と言われても本質的回答になっているのか,常に不安でした。実際,レンズも見たことなかったですし,光路図や解析結果を見て『あっこれは公差少なそうだね』といった感覚もないわけです。これは大きな欠落になります。
 あわせて,当時,委託開発業務ができる体制を作るという会社の要請もあったため,ものづくりを実際に試してみる“修行”に出てみるというようなことを試してみたことがありました。今となっては良い経験であったと考えていますが,個人的に問題点が整理消化されていない状況で“飛び込んで”試してしまったことから,そもそもやりたかったこととの違い,そして,会社が私に求めていることとの違いが発生し,結果的にグループ全体が混乱してしまい統制が取れなくなってしまったことがありました。
 結局,これはいけないということになり,“修行”はやめることにしました。振り返ると,構想やアイデアをディスカッションする相手がいなかった,あるいは聞く耳を持ち得ていなかった,“やるべき”と思い込んでいたというのが大きな原因だったと認識しています。
 以降,いつも多くのディスカッションをし,いろいろな視点からイシューの整理をするように心がけています。たくさんの話し合いをするようになってから,いろいろと気づくようになりました。例えば,常に考えてきたことについてその場では明確に表現できなくても,ぼんやりしたヒントとかアイデア,リスクはすでに頭の中のどこかにあって,話し合う中で輪郭がクリアに見えてくるのではないかということ,だから,じっくり考えることも重要であるのですがそれに加えて,互いに刺激しあったり,話し合ったりすることはチーム内の誰にとってもお互いに重要であるというようなことを最近考えています。
 今の当社の技術者は,そもそもカメラ大好きのエンジニアやさまざまな分野のものづくりの経験者で構成されています。私より数倍適性が高く,お客さまにも良いサービスが提供できるスタッフが集まる結果となっています。まさに適材適所です。離職率も非常に低く,安定した,つまり技術力が蓄積されている組織になりました。
 開発元のSynopsysの人たちを見ていても,個人でも十分に力のある人たちが,短時間の定期的なディスカッションをとても重視していること,刺激を受け与えあうことが開発やイノベーションにも大切と理解しているのが見て取れます。
 開発元の人たちは,尊敬する同僚と一緒に仕事できることをお互いに誇りに思っているところがあり,また開発にはユーザーの方からの声が大切という意識が強く,フェアですね。そりゃいいもの(製品)ができるよね,と納得します。
 我々はその製品の良さをさらに引き出してお客さまに使っていただく役割を担います。 <次ページへ続く>
西郡恵美子(にしごおり・えみこ)

西郡恵美子(にしごおり・えみこ)

1991年 奈良女子大学 理学部 数学科卒
1991年 サイバネットシステム株式会社入社
2013年 サイバネットシステム株式会社 執行役員
●サイバネットシステム株式会社について
サイバネットシステム株式会社は,科学技術計算分野,特にCAE(Computer Aided Engineering)関連の多岐にわたる先端的なソフトウエアソリューションサービスを展開しており,電気機器,輸送用機器,機械,精密機器,医療,教育・研究機関などさまざまな業種及び適用分野におけるソフトウエア,教育サービス,技術サポート,コンサルティング等を提供している。光学設計,照明解析CAEでは,CODE V, LightTools, RSoft, LucidShapeを取り扱っている。
URL:http://www.cybernet.co.jp/

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