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光学は研究する余地はまだあるのでそれを見つけてどのようにやるかワシントン大学名誉教授 アルバート S 小林

これからの日本は,実技をやる人が現場で英語で話をしていかないといけない

聞き手:米国と日本の学会をご覧になって,違いはありますか。

小林:学会自身はだいたい似ています。昔は研究の仕方がだいぶん違って日本はアプライドでありました。大学自身は違った意味のベーシックで,アプライドをやるために行ったのです。日本は終戦後の再建中だったのでアプライドが強かったのです。現在日本の研究もベーシックに変わり同じようになりました。

聞き手:歴史的な流れもありますね。学生の指導といったところではどうでしょうか。

小林:日本でどういうふうに指導しているかというのは見ていませんが,学生がこき使われて何でもやると聞いていました。アメリカでは先生と学生はほとんど対等です。だからやりたくなければ「やらない」と言われるし,雑用的なことはさせません。そういう点で,だいぶん違うと思います。日本の教授・助教授制がないので,教授でも直接学生を指導をします。論文はPh.Dの終わりに近い学生には書かせますがその修正に時間がかかります。時には学生から「これは違う」と言われて,こっちが修正する事もあります。戦争中は英語がほとんどありませんので,日本の先生の発表は論文読みでした。今の日本の研究者はみんなアメリカ人並みで英語もずいぶん上手だと思いますが,その点,若い先生たちはヨーロッパ人や何かとほとんど同等です。
 数年前に文部科学省が,急に日本中の十数の高等専門学校に英語で講義しろと言い始めて,話題になりましたね。1クオータでやる塑性工学の講義を小山高専で集中講義の英語でやりましたが全然質問もできないので,結局日本語で質問をして,日本語で答えてしまっていました。企業は始終英語で対外的に交渉などを行うので,実技ができる高専の人たちも英語ができるようにしたいというわけです。研究の発表だと,そんなに英語ができなくても通じます。

聞き手:日本では英語を小学生のうちから教えようという動きがありますが,これについてはどうご覧になりますか。

小林:中国ではすでに行っていますが,中国人はわりと英語が上手です。今,日本の大学の学生は同じぐらいですけど,昔は中国人の方が英語は上手でしたので,私のところにも中国からの学生がだいぶ入りました。日本も今からやり出すのは遅いかもしれませんが,やれば同じだと思います。 <次ページへ続く>
ALBERT S. KOBAYASHI (あるばーと・さとし・こばやし)

ALBERT S. KOBAYASHI (あるばーと・さとし・こばやし)

1924年12月9日 シカゴ生まれ 1947年9月 東京大学工学部卒業 1947-1950年 小西六株式会社にて生産設計技師 1952年3月 Washington大学 工学部機械工学科修士 1953-1955年 Illinois Tool Works(Chicago)にて設計技術者(高度歯車解析) 1955-1958年 Illinois工科大学Armor Research Foundationの研究技術者(実験応力解析) 1958年6月 Illinois工科大学から博士号 1958年8月 Washington大学工学部機械工学科助教授 1958-1976年 Boeing Aerospace Company顧問 1961年9月 Washington大学工学部機械工学科準教授 1962-1982年 Mathematical Sciences Northwest顧問(構造解析と破壊力学) 1965年9月 Washington大学工学部機械工学科教授 1974-1978年 AFRPL(米空軍ロケット推進研究所)顧問 1984年11月 U.N. Development Program国連開発計画局(UNDP)顧問 1986年1月-1986年6月 Office of Naval Research(米海軍研究事務所ONR)顧問 1988年-1995年 構造力学のBoeing Pennell Professor 1989-1990年 SEMの会長 1997年7月 Washington大学工学部機械工学科名誉教授
●研究分野
破壊力学,実験応力解析,有限要素解析
●主な活動・受賞歴等
National Academy of Engineering (技術アカデミーNAE)会員 American Society of Mechanical Engineers(米国機械学会ASME)フェロー Society of Experimental Mechanics(実験力学会,以前はSESA,現在はSEM)生涯名誉会員,1989会長 American Academy of Mechanics,Sigma Xi and Tau Beta Pi会員 1973年 F. G. Tatnall 賞 1981年 B. J. Lazan 賞 1983年 R. E. Peterson賞 1983年 William M. Murray Lecture Medal 1991年 JSMEから第一回の材料力学部門賞 Burington Resources Foundation教授功績賞 1995年 M. M. Frocht 賞 1995年 ASEE General Electric Senior研究者賞 1997年 勲三等旭日中綬章 1997年 日系アメリカUW Alumni ClubからAlumni功労賞 2006年 ワシントン大学機械工学科の栄誉殿堂入り 2007年 ASME Daniel Drucker Medal 2010年 ASME Nadai Medal 2013年 ワシントン大学工学部 Diamond Award

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