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着想力が豊かで,実行力が速く失敗を財産とできる前向きな志向の人材を育んでほしいナノサイエンスラボ 代表 門田 和也

監督となるのは,権限の持たせ方がわかっている人

聞き手:産官学とご経験されていますが,それぞれの良いところ,悪いところをお聞かせください。

門田:日本の悪いところは,出だし(序盤戦)は良いことづくめのシナリオで,中盤戦が怪しくなっても反省せず,終盤戦になると,責任も取らず,刈り取りもせず,有耶無耶で逃げてしまうところです。また,ガバナンス,マネージの問題は,ヘッド(監督)に公正さの視点で大学教授を担ぐことです。何もわかっていない人物を殿様のように置き,専門家が実行指揮をする構図です。これは,保身体制,異端児除外の内向き組織で,無難に過ごすやり方です。少ない成果も,応用展開する姿勢が無く,立ち消えてしまいます。ことわざの「駕篭に乗る人,担ぐ人,そのまた草鞋を作る人」と階層分担はするが,祭りの後が有耶無耶です。「草鞋を作る人」は帰任しても生かされず,別部門への配属で意気消沈してしまいます。派遣元(原籍側)は,応用や製品化は,自社でやると言いますが,ほとんど怪しいです。単に情報が欲しいだけの烏合の衆にしか見えません。参画当初から,人材育成,国内留学とは考えていないのです。
 監督となるのは,権限の持たせ方がわかっている人でないといけません。専門家っているのですが,大体これは会社から「お前,行ってこい」と言われた部長か何かがやってるのですが,人事も含めた権限が無いとだめです。そういう権限と,金銭的な権限の両方を持った人が来ないと。例えば特許を出す出さないだって,いろんな判断を求められるときに,権限の無い人がいくら上にいたってだめですから,そういう人が理想ですね。そういう人は,日本にはほとんどいませんが,過去30年,40年で育ててこなかったということです。
 資金繰りでは,国税を使うのだからと,単年度予算執行のタガをはめます。例えば,3年間のプロジェクトでは,初年度の予算は,早くても9月ごろでないと認可されません。そこから,調達の公募期間が3~4ケ月たつと,納入は,1月か2月です。これで,初年度の研究成果を3月末までに出せと言ってきます。当然,実行者側は,危ない橋を渡りたくないから,初年度は,小口のテーマにして,次年度中心となります。最終年度は,12月までに予算を使い切り,最終報告を3月末までに行い,チームは解散,原籍へ戻れとなります。つまり,実質1年半しか研究開発期間は無いわけです。
 これでは,世界に勝てる研究ができるはずがありません。少数精鋭,短期決戦主義も良いが,小口成果のみであり,技術が高度化し,先の市場が不透明な今,持続的大型成果は出せないです。産官学が自らを厳しく分析したのでしょうか。「死の谷10年」と言っていましたが,今や「20年」です。あそこに行けば何とかなるという,「場」(土俵)もありません。 <次ページへ続く>
門田 和也(かどた・かずや)

門田 和也(かどた・かずや)

1943年 神奈川県生まれ 1972年 東京工業大学 大学院理工学研究科 卒業 工学博士 1974年 日立製作所入社 2003年 定年退職後,産総研,東北大学を経て,ナノサイエンスラボ代表
●研究分野
半導体設計
●主な活動・受賞歴等
半導体メモリ開発(特に微細加工技術を中心)

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