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着想力が豊かで,実行力が速く失敗を財産とできる前向きな志向の人材を育んでほしいナノサイエンスラボ 代表 門田 和也

日本の生産現場(ファブ)は,リスク管理されたプロ野球でなければならない

聞き手:門田さまが,研究・開発プロセスにおいて自信を喪失されたり,試行錯誤して苦悩されたりしましたご経験がありましたら,お聞かせください。また,こうした苦難をどのように乗り越えてこられましたか。

門田:明確に失敗し,苦慮した事例はほとんどありません。なぜかと言うと,VLSIは,名前の通り「集積化」であるため,数万,数十万の技術を「集積」するのですが,その各々の選択肢は,1本ではなく,危険分散を考慮し,必ず複数候補(バックアップ)を考慮・準備し,まさかの場合は,乗り移る様な自由度,柔軟性を必然的に持たせる(監督の選手起用術)からです。この2番手の選手が,後に,本命で登場することもあります。
 VLSIは,市場価格(ビットコスト等)に対応を迫られるので,製品化初期の「集積技術」をそのまま何年も継続すると,価格対応や歩留向上,品質向上に追いつかなくなります。このときが,2番手,3番手の登場となります。日本の生産現場(ファブ)は,このノウハウが際立って良く,訓練された多くの人材が昼夜「改善」に取り組んできました。今は,リスク分散だと言っています。半年後や1年後に,いきなりがけから落っこちるわけにいかなかったら,当然,次の手を打っておきます。それには,人もいるしお金もいるわけですよ。私はそういう投資が必要だと思っていましたので,「人的投資と金銭的投資をやってください。それがマネジャーの仕事でしょう」と,いつも工場とか製作所の偉い人に言っていました。高校野球みたいに9回裏,12回延長まで1人のピッチャーで投げさせるのではなくて,リスク管理されたプロ野球でないとだめですよ,と言ってきたのです。
 しかし, 1986年の日米半導体協定によって,残念ながら,合法的にこの宝の山を開示させられ,ここが,日本半導体の凋落の始まりとも言われています。
 3μm世代のDRAM生産は,世界的には,ステッパー(10:1のポジ型レジスト・プロセス)を採用し,日本各社は,プロジェクション(1:1のポジ型レジスト・プロセス)が主流でしたが,これを最も安く各工場に余剰設備として存在したコンタクト露光(1:1のネガ型レジスト・プロセス)に変換したことがありました。無理だとか,無謀だとか言われましたが,マスクの工夫,レジストの工夫を1年間も地道にした結果,同等の性能,歩留,品質が得られ,そのファブは,称賛を浴びました。ポイントは,マスク基板材質を硬くし,コンタクト時の欠陥発生を抑え,かつ低膨張率にして,露光時の重ね合わせ精度を向上させる,ネガ型レジストの高分子特性を耐ドライエッチ性に変え,マスクとの離型性をよくする,等々です。 <次ページへ続く>
門田 和也(かどた・かずや)

門田 和也(かどた・かずや)

1943年 神奈川県生まれ 1972年 東京工業大学 大学院理工学研究科 卒業 工学博士 1974年 日立製作所入社 2003年 定年退職後,産総研,東北大学を経て,ナノサイエンスラボ代表
●研究分野
半導体設計
●主な活動・受賞歴等
半導体メモリ開発(特に微細加工技術を中心)

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