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コバルトブルーに魅せられて -前人未到のGaN p-n接合への挑戦-名城大学 / 名古屋大学 赤崎 勇

GaNを用いた青色LED,レーザーの研究へ

 実は,私は,GaAsの研究をはじめて間もなく, 窒化ガリウム(GaN)の兄弟分の窒化アルミニウム(AIN)の結晶を1966年から作っていました。1967年には論文もだしています。この時の論文はAINの光学特性についてのもので,主に赤外域の特性について書いています。このAINはいろいろな波長で発光しますがバンドギャップが大きすぎて殆んど電流が流れません。つまりELができないのです。そんなときに(1969年),マルスカという人が,GaNの結晶を作ったのです。このときの結晶は,品質は良くなかったのですが,GaNはバンドギャップが3.4eVあり,青色LEDを実現できる可能性があることが分かったのです。その後,非常に暗かったのですが,RCAのグループがMIS型の青緑色LEDを作り,GaN研究は一気に立上りましたが,やがて殆どの研究者は撤退してしまいました。その理由は,1つには良質な結晶の作製が極めて困難であることと,さらにp型結晶が出来なかったからです。一時,p型伝導は理論的にも無理だろうと言われたこともありました。そのようなこともあり,その後の10年間に研究者の数が世界中で数えるほどに減少し,GaN研究は下火になってしまいました。  ところで,青色発光デバイスを実現するための候補材料は3つ考えられます。
 シリコンカーバイド(SiC),ZnSe,GaNです。青色発光デバイスの実現をめざす研究者のほぼ半分はSiCを研究していました。というのは上記3者のうち唯一p-n接合ができるからなのですが,このSiCはバンド構造が間接遷移型で,どう転んでもレーザーにならないのです。これでは本質的にレーザーは作れません。私はレーザーができないものには興味がなく,最初からSiCを研究する気はありませんでした。
 ZnSeとGaNはいずれも直接遷移型ですが,2つを比べた場合,GaNを使って青色を実現するのはより難しいのです。なぜかというと,融点も蒸気圧も高く結晶を作るのがより難しく,また硬いので加工も難しいからなのです。それだけでなく,バンドギャップもZnSeより大きいので,ZnSeよりもさらにp型になりにくいのです。このようなことから,残りの直接遷移型を研究するグループの9割以上はZnSe派で,私を含めたごく僅かの人がGaNへの挑戦を続けていました。
 その中で,海外では唯一フィリップス社だけがGaNを続けていました。しかし,フィリップスのグループも,70年代後半になるとGaNの研究をやめてしまったのです。そのときの心境は,まさに「我一人荒れ野を行く」といった感じでした。しかし,私は結晶さえ良くすれば,必ず道は開けると信じ,GaNの結晶成長の研究を続けました。そのような時に名古屋大学に帰る話しが持ち上がったのです。松下電器東京研究所には部下の人もいましたから,すぐには行けませんでしたが,あらかじめ,名古屋大学の私の研究室に入る(予定)の学生さんにGaNの勉強をしてもらいました。その時の学生が,あとで言うのです。
 GaNの論文を読まされた時は何のことか分からずびっくりしました。ほかの先生に聞いたら,「出来るかどうか分からないよ・・・・・・」だったというのです(笑)。 <次ページへ続く>
赤崎 勇(あかさき・いさむ)

赤崎 勇(あかさき・いさむ)

1952年,京都大学理学部卒業。同年,神戸工業(株)入社。59年,名古屋大学工学部電子工学科助手,同講師,同教授を経て64年,松下電器産業(株)入社,東京研究所基礎第4研究室々長,同半導体部長等を歴任。81年,名古屋大学工学部電子工学科教授。92年,名古屋大学定年退官。同年,名城大学理工学部電気電子工学科教授,名古屋大学名誉教授。95?96年,北海道大学量子界面エレクトロニクス研究センター客員教授。96?2001年,日本学術振興会未来開拓学術研究推進事業プロジェクトリーダー。96年~,文部科学省 名城大学ハイテク・リサーチ・センタープロジェクトリーダー。2001年,名古屋大学赤崎記念研究センター(兼務),そして現在に至る。
工学博士,IEEE Fellow,日本フィンランドインスティチュート理事,フランス共和国モンペリエ市名誉市民,科学技術振興事業団 参与(02年~)など。 1995年,ハインリッヒ・ウェルカー金メダル。97年,紫綬褒章。98年,ローディス賞。98年,ジャック・A・モートン賞。99年,米国国体科学技術賞。2000年,東レ科学技術賞。01年,朝日賞。02年,第2回応用物理学会業績賞(研究業績)。02年,藤原賞など多数受賞。

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