【重要】技術情報誌『O plus E』休刊のお知らせ

自分が開発したファイバーを標準にできたのは一番うれしかった大阪府立大学 大橋 正治

ハードルは高いが研究としては面白い

聞き手:フューモードファイバーやマルチコアファイバーの将来展望をお聞かせください。

大橋:フューモードファイバーやマルチコアファイバーでは,今までは信号の経路,つまり光の伝搬する道が1つだったものが,モードが増えることで空間的にはn個に増えます。そうすると,n個のモードを分けたり入れたり,つないだりするデバイスの問題を解決する必要がありますが,そこを解決できれば十分実用化できると思います。これは私の個人的な見解ですが,マルチコアファイバーのほうがフューモードファイバーに比べて技術的には楽ではないかと思っています。
 マルチコアといっても個々のコアはシングルモードであるファイバーです。ここで問題になるのは,各コアに光をどうやって入れるか,各コアを増幅するデバイスや,ファイバーの接続をどうするかということです。ただ,今の技術の延長線上ですし,その技術も進展しているので早いかなという気がしています。  ただアンプの小型化が大変かもしれません。7個コアがあるときにそのアンプが,コアが200ミクロンでアンプが10センチや20センチと大きいものになってしまと実用には難しいと思います。
 マルチコアファイバーやフューモードファイバーそのものは,今までの技術技術を十分に生かせば,いいものはすぐにできると思います。ただ,そこから先のつなぐ技術,光を入れる,受ける技術,これらの研究の進展が,実用になるかならないかを決めるのではないかと思っています。
 今までと同じ大きさではたぶん無理だと思いますから,一定の条件,たとえばある伝送容量に対してどのくらいの大きさであるとか,そういう要求をどの程度まで実現できるかによって,マルチコアファイバーやフューモードファイバーが,どう生かされるかという話ではないかと思っています。
 研究しているほうとしては非常に面白いのですが,いったん標準とか実用化というような話になってくると,ちょっとハードルが高いかなという感じがします。自分がやっていてこういうと,後で叱られるかもしれませんが(笑)。
 ただ実用化ができればすごい技術だと思います。たとえば1本のファイバーで,今1コアで100Tbit/sぐらいが伝送限界ですが,それがマルチコアファイバーの場合200ミクロン程度のファイバー径で10倍,100倍ぐらいの伝送容量になります。コストしだいという部分はありますが,これらのファイバーは最初は短いところから使われていくのではないでしょうか。 <次ページへ続く>
大橋 正治(おおはし・まさはる)

大橋 正治(おおはし・まさはる)

1953年 岡山県生まれ 1972年 岡山県立玉島高校卒業
1977年 名古屋工業大学工学部 電気工学科卒業
1979年 東北大学 大学院工学研究科 電気及び通信工学専攻修了
1979年 日本電信電話公社(現NTT入社)
2002年 大阪府立大学大学院工学研究科教授
●研究分野
光伝送媒体に関する研究 次世代光ネットワークに関する研究 光ファイバセンシング技術の研究
●主な活動・受賞歴等
1997年~2008年 ITU-TSG15課題18のラポータ(3会期)
2004年,2008年 Certificate of Appreciation, ITU-T
2011年 日本ITU協会賞功績賞
2013年~ IEC TC86 国内委員会 委員長

私の発言 新着もっと見る

本誌にて好評連載中

私の発言もっと見る

一枚の写真もっと見る