【重要】技術情報誌『O plus E』休刊のお知らせ

研究というのはできないことに挑戦していくほうがいい東京電機大学 工学部 機械工学科 先端機械コース 教授 堀内 敏行

分野の違う班から生まれる 技術交流

聞き手:研究が二つに分かれていることでそれぞれの学生さんの指導も,変わるものでしょうか?

堀内:いや,それはあまり変わりません。同じ部屋の中で,顔をつき合わせてやっていますので。みんなで意見交換しながら研究しています。技術的にも飛翔ロボットの班が配線とかをプリント基板に作りたいときには,リソグラフィのチームと相談をしたりとか,リソグラフィの学生が露光装置を作るための板を加工したくて,飛翔班の学生に三次元加工機の使い方を聞いたりとかしています。学生同士での技術交流があるので,全く違う分野の勉強もできますから学生にはいいと思っています。リソグラフィは,具合が悪いことがあると,経験に照らして思い当たるまますぐ口を出したくなるのですが,飛翔ロボットは,最近はもう学生主導で,私はあまり口を出すところがないんですよ。反対に教えてもらう状態です。「えー,それは初耳だ」「先生,言ってなかったでしたっけ?」「知らないよ。いつからそうなったの?」といった具合です(笑)。
 学生が進める研究はなかなか進まないのが特徴です。学生からすると,気になるところをいろいろと確かめてみたいようです。また,常々,「研究というのはできないことに挑戦していくほうがいい。やればそのうちできるとか,もう答えが見えているようなものはやっつけ仕事だから,やってもしょうがない」という話をしているせいでなかなか進まないのかもしれません。研究が進んでは戻り,また進んでは戻りすることや,同じ所でぐるぐるさまよっていて少しずつしか進まない様は,あたかものこぎりの歯やらせん階段のようです。でも,いろいろ議論したり,友達に助けてもらったりしながら少しずつ前進する,それがいいところのようにも思えます。
 こんなことを言うのは変かもしれないんですけど,途中でテーマを変える学生もいるんです。例えば,研究室を決めるときには飛翔ロボットがやりたいって入って来たのに,大学院へ行くころになるとリソグラフィのほうがいいと言って,ころっと変わっちゃったりする。ちょっと地味な仕事というのは,やってみて面白さが分かるまでは,なかなか皆さん取り組んでくれないのかなという気がしています。 <次ページへ続く>
堀内敏行(ほりうち・としゆき)

堀内敏行(ほりうち・としゆき)

1948年 神奈川県生まれ。1970年東京大学工学部機械工学科 卒業。1970年 日本電信電話公社入社。1997年 東京電機大学 工学部 精密機械工学科 教授。現在,東京電機大学 工学部 機械工学科 先端機械コース 教授。
●研究分野:光リソグラフィ,マイクロ部品製作技術,小型飛翔ロボット
●現在,電気学会 リソグラフィ次世代技術調査専門委員会 委員長。応用物理学会 シリコンテクノロジー分科会 幹事。精密工学会 代議員。国際シンポジウム フォトマスクジャパン 組織委員会 委員長。

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