【重要】技術情報誌『O plus E』休刊のお知らせ

随所作主HOYA(株) 流川 治

1番でいるための秘訣

聞き手:お話を聞いて,流川さんは,「この道一筋」でやってこられ,長年の間世界のトップシェアとなる製品を開発してこられましたが,それには何か秘訣があったからですか?

流川:数十年にわたり,シェア世界一を維持するためには,単なる物作りだけではとうてい不可能で,常に顧客が欲しくなるような先端提案を続けられたからです。開発のやり方というものは,教えてくれる人がいるわけではありません。ですから,昔から「絶対にできる,考えに考えぬいて一番になれ」と言ってきました。
 絶対に諦めずに一人一人が思い込みを持って自分の守備範囲で一番になれば,ひいては,会社も世界一にもなれるものです。つまり,禅の教えでいうところの「随所作主」です。
 うちなどは,後から追いかけて行って,追い抜いて勝つような体力がありませんでしたから,新しいものを見つけて,「できない」と絶対に言わないで,それを大きくして1番になるようにしました。そのためには,業界の一歩先を行く新しい提案を常に出し続け,20年後,30年後もこの領域では必ずトップで居続けるといった強い意志も必要でした。
 それに加えて,ネットワークといいますか,人や会社のつながりというのも非常に大切だと思います。自前の新しい製造装置を持たないと世界一にはなれません。例えば,スパッター装置を他の会社に作ってもらう場合,開発費も全部うちで出せればいいのでしょうが,採算に合いませんからそんなことはできません。しかしながら,人と会社のネットワークが上手くできていれば,「しょうがない,おまえが言うならやってやるよ」「わかった,あんたが言うなら工夫してみよう」「次はこういうことになりそうだからこういう準備をしてやろう」というように良い方向にどんどん進んで行くのです。こうなるはずだから,どうしてもこのようにしてもらいたいという熱意が伝われば,特に中小企業の人達は協力してくれました。先ほどお話ししたスパッター装置のターゲットにしても,そのような企業の協力があったからこそできたのです。

聞き手:中小企業も非常に大切ということですね。大手メーカーと違い,一般には知られていない日本の中小企業が,ある製品で世界のシェアの80%や90%を占めているということが結構あります。学生の就職氷河期と呼ばれていますが,そういった企業の魅力をアピールし,技術力を伸ばす支援を国が行って,若者がそのような企業にどんどん就職するようになれば,日本はもっと元気になりそうな気がします。

本日は,貴重なお話ありがとうございました。(おわり)

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