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地球上に存在するすべてのエネルギーの原点は水の光分解ではないでしょうか。東京工芸大学 本多 健一

燃料電池の実用化へ

 われわれの研究成果が注目されたのは,太陽光で水素燃料を作り出せるからでしたが,「喉元過ぎれば熱さを忘れる」ではありませんが,オイルショック騒動もおさまると,水素燃料に対する社会的関心は薄れていきました。
 ところが,1990年代から地球温暖化問題がクローズアップされるようになり,燃料電池として水素燃料が再び注目されるようになってきたのです。
 現在,炭酸ガスや窒素酸化物の排出をおさえる目的で,燃料電池を使った電気自動車の開発が行われていますが,まだ価格が1台1億円以上しますし,燃料である水素供給のインフラが整備されておらず,普及には時間がかかりそうです。
 燃料電池の原理は水の電気分解の逆で,水素と酸素を化学反応させ電気エネルギーを発生させます。このため,排出されるのは水だけとなり,非常にクリーンなエネルギーなのですが,現在は燃料となる水素の製造方法に問題があります。
 水素を作り出す最も簡単な方法は水の電気分解です。電気分解では電力を必要としますが,日本国内の発電量の割合は火力が1/2を占め,原子力が1/3となっています。電気分解用の電力を火力発電により炭酸ガスを出しながら作ったのでは本末転倒となります。かといって原子力発電所を増やすとなると,また別な問題が発生します。
 さらに,コストのことを考えると,水素の価格をガソリン以下にする必要がありますから,電気分解により水素を作る方法は現実的ではありません。
 そのようなことで,現在実用化されているのが,天然ガスや石油を改質して水素を取り出す方法です。しかしながら,これでは化石燃料に依存している従来型のエネルギーと大差はありません。
 このような状況を踏まえて考えると,燃料電池の究極は,やはり太陽光エネルギーを使った水の光分解により水素を作り出すことだと思います。
 エネルギー問題にしても環境問題にしても,このように地球的規模で取り組みが始まっていますが,将来必ず訪れることが予想されるのに,本格的な取り組みがまだなされていない問題に食料危機があります。

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