【重要】技術情報誌『O plus E』休刊のお知らせ

光技術の行き着くところは,結局のところ健康問題だと思います。浜松ホトニクス(株) 晝馬 輝夫

米作りと高出力半導体レーザー

 日本の国内産業の発展における課題には,人件費の他にもエネルギーのコストが外国に比べてえらく高いということがあります。われわれは,大阪大学でやっているレーザー核融合研究にも協力しているのですが,国はエネルギー問題にもっと真剣に取り組む必要があるのではないかと感じます。
 レーザー核融合の研究では,ストリークカメラをはじめとしていろいろな装置を開発しましたが,このレーザー核融合研究センター初代所長の山中千代衛先生も小柴先生に輪をかけたような先生でした(笑)。例えば,何か装置を作れと言われて,作って持って行くわけです。持って行くと,これでいいとは言わないのだけれど「持って来たか」となるわけです。それでお金を貰う段になると「お前高い,半分にまけろ」と言うのです。もう使っているのを半値にしろと言うのです。要するに,メーカーというのは,だいたい原価の倍で持ってくるものだと敵はちゃんと知っているのです(笑)。だから,それで儲かったことはないのだけれども新しいことはいろいろとやらされました。
 実は,このいろいろとやらされたなかに,現在開発中の高出力半導体レーザーもあります。まだ研究室的に作製できた段階ではありますが,1~2年もすれば生産技術が確立できるところにはきています。
 それで,この高出力半導体レーザーが数年前にできたときに,さて何をしようかと考えて,ふと思いついたのが1994年にあった米騒動です。考えてみたら,米作りなどの農業は産業とはいえません。お天道様しだいで生産量が変わるようでは産業とはとてもいえないのです。それなら,この半導体レーザーを使って米作りを産業にしてやろうじゃないかと考えたのです。それで,半導体レーザーを使って試験的に米を育ててみたら,なんと70日で米が収穫できたのです。70日だと単純計算で年5回米が獲れることになります。
 それで,前会長の三輪大作さんが亡くなったときに,三輪さんの遺言は「葬式はまかりならん,偲ぶ会ならいい」というものだったので,「三輪さんが米を作った。だからこれは酒を造って俺に偲ぶ会をやれ」ということだなと思って,山田錦という酒米を半導体レーザーで作ってお酒を造ったのです。
 開発スタッフは非常に苦労したみたいですけれども,なんとか無事できて,このあいだ,その酒をみんなに飲んでもらったのです。たくさんはできなかったのですが,大変おいしいお酒ができました。私も実際飲んでみて,これはうまいと思った。
 農林水産省の技術の親方で,私が半導体レーザーで米をつくると言ったら「藁ならできるかもしれないが,米はできないよ」と言った方がいました。その人に「米ができたよ」と言ったら「なぜできたのか」と聞くので「それを見つけるのが農水省の仕事だ」と答えたのだけれども,その人にも飲んでもらったら「シャープだ,こんなうまい酒は飲んだことがない」と言ってました(笑)。
 しかし,このお酒の原価計算をしてみると,直接材料のコストだけで,なんと1升30万円もかかっているのです。おいしいはずですよ(笑)。
 といっても,50m2の試験場で作ったのですからしょうがありませんが。しかし,これを何町歩という田んぼでやり,コントロールもきちんとして,電気もむやみに使わないでやれば何とか安くできると思うのです。
 それにプラスして,レーザー核融合による発電を実用化し,電気代をキロワットアワー3円50銭ぐらいにできれば,もっと安くすることができると思います。阪大の先生に言わせると「それは無理だ,8円だ」と言うのですが,私は「8円になるなら工業生産だから3円50銭ぐらいにはすぐなる。そんなことは大学の先生が心配せんでもいい」と言っています。

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