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研究を登山にたとえたならば,山の裏側には別のもっと楽なルートがあるかもしれません。東北大学 名誉教授 山本 正樹

発想の連鎖

聞き手:最後に,先生の長年の研究生活を踏まえて,若い研究者や学生さんに対してアドバイスなどをいただければと思います。

山本:私自身は,計測法の開発ということで,ここ東北大学で30年にわたり研究を行ってきましたが,研究をやっていて,発見といいますか面白かったことがあります。10年ぐらい前から,軟X線を光源とした顕微鏡の開発を行っていますが,最初はデバイスとして軟X線の反射鏡を作ることしか考えていませんでした。しかし,システムということを考え始めたとたんに,光源,光学系,検出器などの新しい課題が出てきました。そのため,これらの問題を解決しないといけませんので,いろいろと頭をひねってアイデアを出していますと,発想の連鎖といいますか,解決のためのアイデアの発想法というのがだんだんと分かってきました。
 それは,第一に原理・原則に立ち返って考えることです。そうすると,今まで考えられてきた解決方法とはまったく異なる解決策が見えてきます。これは,山に登るのに似ています。山の頂を目指そうと思うと,普通はすでにあるルートを使って登ります。これだと分かりやすくて安心です。しかし,山の裏側には別のもっと楽なルートがあるかもしれません。山の裏側に行くには,山のすそ野をぐるりと回る必要がありますから,そのためにはその地形を知っているなどの多くの知識が必要です。
 これと同じように,研究をやっていて壁にぶつかったときに,そのすそ野である原理・原則に立ち戻れば,解決策である裏道も見えてきます。そして,迷わずにそこにたどり着くためには,いろいろな分野の知識があればあるほど有利です。その知識が明かりとなって,先の道を照らしてくれます。
 現代は忙しい時代ですから,仕事や研究をするにしても,自分の専門分野だけでクローズしがちです。しかしながら,ここで若い人たちに言いたいのは,なるべく自分の興味を広く持つことです。そうすると,より先が見通せるようになります。

聞き手:なるほど。確かにそうかもしれません。

山本:発明・発見は若い人の専売特許で,年寄りにはあまりそういう機会はないように思われるのですが,ある程度経験を積んでいろいろなことを知っていると,若いころとは違う過程を踏んで新しい着想に到達することもあります。
 いずれにしても重要なのは,「山の上に到達するためのルートは他にも必ずある」という考え方を持つことです。解決すべき課題があったときに,解決方法にはいろいろなやり方があることを信じ,その信じるところを深くやるということが重要です。ただし,それは原則・原理にしたがっている必要があります。そのような研究姿勢を保ちながら,常に広く知識や興味を持ち自分のものにしていけば,それが将来の発展や飛躍を研究にもたらし,他の人にはない発想に到達できると思います。
 研究室の学生にしても,どうしても与えられたテーマだけをやるので手一杯で,他の人のテーマになかなか首を突っ込まない傾向が多いのですが,自分の若いときを考えてみると,ほかの人のテーマであっても興味を持ち,セミナーなどでも少しうるさがられるぐらいに質問をしていました(笑)。研究者は,自分で分野を限定してしまわず,若いうちからいろいろなことに興味を持ってやることが非常に大事だと思います。(おわり)

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