【重要】技術情報誌『O plus E』休刊のお知らせ

第24回 Art in Holography― International Congress on Art and Holography ― ― セントメリーカレッジにて ―

アフター5


 話は戻るが,夜はと言えば,ビールを片手にやはりディスカッションタイムとなる(図16)。心地よい居間といった空間にアルコールが用意され話も弾む。(図16(a))Harriet Casdin-Silver(左)は,アメリカのホログラフィーアートのパイオニアで,Steve Bentonの技術的サポートを受けていち早くアートホログラム制作を実践した。図16(b)の左から2人目はAnna Maria Nicolsonで,後のNYのパルススタジオ,HoloCenterの創始者でアーティスト,作品のすべてがパルスホログラムである。Holocenterは彼女のスタジオとしてだけでなく,外部からファンドを受けてパルススタジオをA.I.Rプログラムとしてアーティストに広く門戸を開放し,MOHが閉鎖したのち,その名の通り,NYのホログラフィーアートの重要な拠点となった。筆者は2回もその恩恵にあずかって,パルスのエキサイティングなホログラムを制作することができた。現在,彼女はセンターの運営からは身を引き,若い世代がそれを引き継いでいる。  ある晩のことである。突然,愉快なパーティーが開かれた。帽子の仮装パーティーである。カレッジの演劇部の倉庫にたくさんのバラエティーに富んだ様々な帽子が保管されているのを,参加者のアーティストの1人が見つけ出し,遊び半分に,それらの帽子を参加者全員にイメージの合ったデザインを選んでは次々にかぶせていったのである。帽子というのは面白いもので,それだけで変身に十分の効果がある。皆は大変面白がってノリノリの気分になり,飲み物片手のディスカッションタイムはいつの間にか予期せぬ仮装パーティーとなって楽しんでいる様子がうかがえる(図17)。図17(a)はPosyと筆者である。彼女との初めての出会いの様子は当連載第4回(O plus E 2018年7・8月号, Vol.40, No.5, p. 680)に掲載されている。  図17(b)は,Andy Pepper(左)とSam More(右)である。SamはNYで活動するアーティスト,美しいレインボウホログラムをガラスやネオン管と組み合わせて構成し,立体のオブジェとして仕上げられた独創的な作品は,一般のアートギャラリーで展示されている。また,NYでいち早く(1970年代)Holography schoolをDan Schweitzerと2人でスタートさせた。彼らの生徒の中にRudie Berkhoutがいる。オランダで照明デザインを学んだRudieはNYに留まってレインボウホログラムの特長を十分に生かした幻想的で美しいホログラムを数多く制作し,代表的なホログラフィーアーティストの1人となっている。彼のかなりの数のホログラムが東京工業大学にも収蔵されているが偶然とは言えない。私が彼らと最初に会ったのは1980年,最初のMOHのA・I・Rで NYに滞在していた時である。そのとき私たちは4人ともまったく同い年であることを知り,勝手に親しみを覚えたのだった。  国際会議の醍醐味は一堂にいろいろな人物と出会えることである。そこから多くの刺激を受け,次の制作のエネルギーを得ることができるのである。咋今このコロナ禍では,国際会議やシンポジウムは皆キャンセルとなり,遠く離れた知人たちと直接会う機会がまったくなくなってしまった。そのかわりリモートのミーティングの機会が増え,ある意味,地理的距離がなくなって便利になった面もある。しかし,プレゼンテーションの場としてはともかくとして,ディスカッションや意見交換,情報交換から受ける刺激や熱量は実際の対面のミーティングにはるかに及ばない。こう感じるのは筆者だけであろうか?

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