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第23回 国際ディスプレイホログラフィーシンポジウム・ISDH ― レイクフォーレスト・カレッジ その2 ―

人気投票


 この年(1985年)のエクジビションの初日,展示されたホログラムの中から最も優れたホログラムを選び出す投票がシンポジウム参加者全員によって行われ,圧倒的な得票数でMargaret Benyonの「タイガール」が選ばれた(図5)。パルスで撮影されたMargaret自身のポートレートホログラムをH1(マスターホログラム)とした銀塩反射型ホログラムで,背景にタイガーの写真を重ねた作品である。
 ホログラム像が非常に明るく再生される視点では,背景の写真画像は目立たないが(図5(a)),視点の移動に連れてMargaretとタイガーの顔がオーバーラップし,メタモルフォーゼのように変化する(図5(b))。背景のタイガーの顔の中心部分は少しカットされ,両者の瞳の位置が完全に重ねられていることが,鑑賞者に人物と動物の両方から同時に見つめられているような錯覚を起こさせ,実にインパクトのあるイメージとなっている。
 私の出品したホログラムは,ニューヨークのMOH(Museum of Holography)で三度目のグラントとなるアーティスト・イン・レジデンスで制作した,マルチカラー透過型のホログラム(40 cm×30 cm)である(図6)。この時,初めてのシャドウグラムを試みた作品だ。シャドウグラムとは,ディフューザー(拡散板)を背景にしたオブジェのシルエットを被写体として撮影したホログラムのことを指す。有機的なシャコガイのフォルムの透明なオブジェと無機的な幾何学パターンを組み合わせ,イメージはできるだけ抽象的に,そして,光の色彩の面白さを表現することをねらったのだが,残念ながら,リアルな3次元像のインパクトある作品にはとても太刀打ちできなかった。
 シンポジウムの開催に合わせ常にエクジビションは開かれているが,その後もこのような投票が行われたか,記憶はさだかではない。タイガールの投票があまりにインパクトがあったのか,あるいは他の回のことは忘れてしまったのかもしれない。Margaret Benyonはイギリスのアーティストで,画家からスタートし,1960年代後半にいち早くホログラフィーを表現メディアとして手がけたパイオニアの1人である。パルスのホログラムを多数制作している。代表作のコスメティックシリーズは,いろいろなモデルのポートレートホログラムにペインティングを施したホログラムシリーズで,タイガールの少し後に制作されている。彼女の作品はすべて反射型のホログラムで,イギリスでは他の作家たちも反射型が中心である。面白いことに,レインボウタイプの作品を制作するアーティストはアメリカに集中している。それは,レインボウホログラムを発明したBentonの影響といったところだろうか。そういえば,イギリスでは,ホログラムの感光材料の研究者ニック・フィリップス(Nicholas Philips)教授がLoughborough Universityにいて,自らも多くのユニークな反射型ホログラムを制作している。技術が今も進行形の新しいメディアであるホログラフィーを使いこなすには,アーティストにとって,その技術をサポートしてくれるサイエンティストが身近にいることは大きな糧となるにちがいない。

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