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第20回 台湾交流録 part 6 ホログラフィー講座の拡がり

ドタキャン


 コース日程も決まり航空券も入手して出発まで万全のスタンバイの1週間前,突然航空会社からFlight Alert のメールが届き,“往路のフライトはキャンセルされた”との知らせが飛び込んできた。何事かと仰天! よく読むと,EVA航空のクルーのストライキが原因だという。欧米の航空会社ではよくある話だが,サービスをうたい文句にしている台湾の航空会社のストライキはこれまで聞いたことがない。開講日はすでに決まっている。出発直前のフライトのドタキャンはあり得ない話だ! 払い戻しの手続きならともかく,代替え便の交渉はメールでは埒が明かない。電話は常に通話中でまったく不通である。仕方なくやっとの思いでEVA航空東京オフィスを探し出し,直接出向いた。高雄へは台北に比べ便数も多くない。1日を費やして,やっと何とか高雄行きの代替え便の予約ができて胸をなでおろした。
 到着日の夕方,高雄空港まで迎えが来てくれた。空港から大学までは車で1時間。ゲストハウスに着きホッと一息し,ネット接続を完了して最初に目に飛び込んできたメールが,なんとまたFlight Alertではないか! 今度は半月先の復路の便がキャンセルになったとの知らせだ。そんなあ…。朝,日本を出発するときはまだその知らせは入っていなかった。到着した高雄空港でもし知ることができたなら,その場ですぐ復路の代替え手続きができたものを…。翌日は予備の日として1日フリーにとってあったのだが,結局,復路便の手続きのため高雄まで出かけ,1日を棒に振ることになってしまった。
 EVA航空の事務所で,ぶつぶつ文句を言ったら,クルーのストライキは会社創業以来初めての出来事だとスタッフから聞かされた。

新講座


 2019年の夏に訪れたとき,わずか1年の間に台南キャンパス周辺の環境は急速に変化しつつあった。高鐵駅から大学までの区間,長い間更地だったサイエンスパーク予定区画は,ビル建設の土台工事が始まり,前年ゲストハウスと研究棟の間に広がっていたコスモス畑には新しい研究棟が複数建設中であった。毎朝,ゲストハウスから講座のある研究棟まで通う道路は,大型の工事車両がひっきりなしに行き来していた。
 光学の学生実験室の設備は充実していた(図10)。光学系の学生たちもホログラフィーについてはほとんど知識がなかった。講義と実験にはDr. Lanと新竹からProf. Linが駆けつけてくれた。これまでと同様に,受講生は各自ホログラム(ワンステップレインボウ,フォトポリマー,4×5インチ)を制作し,作品に仕上げて展示するコースとした。図11はProf. Linと被写体製作する学生たちである。イメージは常に影であるが,素材によっては面白い効果が現れる。図12は筆者のテストホログラムで,ガラスの塊のシャドーグラムである。同一のホログラムを上下にセットし,1個の光源で2枚同時に再生する。わずかの視点の上下位置の差が,色彩の変化となって表れることがよく分かる。ここでは被写体とホログラムを並べて展示し,どのような画像が記録されるかを知ることができる(図13)。最終日には新竹や台北から知人の先生たちも駆けつけてくれ,全員で集合写真を撮った(図14)。 <次ページへ続く>

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