【重要】技術情報誌『O plus E』休刊のお知らせ

第18回 台湾交流録 part 4 次から次へ

一難去って…


 早々,Dr. Hsiehに私の提案を伝えた。ホログラムをガラスにラミネート加工し,再び元の場所に常設できないかという内容だ。“Grassland”にもう一度日の目を見せたかった。手順としては,フィルムは外して日本にいったん戻す。それを日本でガラスラミネート加工を施して,台湾に送り返す。フレームは既存のものは流用できないので,まったく新しいものに作り変える必要がある。初期の費用よりさらに予算が膨らむことは明白であった。私は実現の可能性は五分五分と予想していたのだが,ありがたいことに,大学側から前向きに検討すると返ってきた。しかし,ホッとしたのもつかの間,同じ時期に,Dr. Hsiehは母校の交通大学に移籍する話が進んでいて,この先“Grassland”に関して手伝えなくなると聞かされた。えー! それでは,再設置のプロジェクトはどうなってしまうのか? Gou学長もすでに退官されてしまわれたし…。恐る恐る「ではこれからはどうすればよいか?」と質問したところ,後任の先生を紹介していただいた。2008年のHODICが開催された時の議長で,よく知る先生だったので,私は胸をなでおろした。常設工事の第2ラウンドが始まったばかりなのに,すでに山あり谷ありの道である。

Good timing-Hodic in Taiwan 3 崑山科技大学(2012年12月)


 その年の12月,Hodic in Taiwan 3が台南の崑山科技大学(Kun Shan University)で開催されると聞いた時,真っ先に,その帰路には台北に立ち寄って,フレームから“Grassland”を外し,手荷物で持ち帰ることを思いついた。HODIC開催はgood timingであった。
 崑山科技大学 視覚伝達設計系は,ノースウエールズのISDHで出会ったProf. Huangが教鞭をとっている。彼女が議長になってHODICが開催された。立地は観光地としても有名な高雄にも近く,日本からも多数参加した。ちょうどドイツからのビジティングアーティストも参加して,講演会と併設して開催されたエクジビションは,1日で終わらせるにはもったいないほどの充実ぶりであった。図5(a)はユニークな蜘蛛の窓を背景にしたポスター,図5(b)は展示したホログラムである。
 HODIC終了後,高速鉄道の高鐵で台北に移動した。額からの取り外し作業に多くの時間は要らなかった。帰国後,すぐにラミネート加工の準備作業がスタートした。国際間での経理に関する書類のやり取り,金銭の授受,輸送方法の打ち合わせなどに生じる,解決しなければならない問題が山積みとなったが,投げ出すわけにはいかない。何とかホログラムを再設置にこぎつけるまではと,一歩一歩作業を進めていった。 <次ページへ続く>

本誌掲載号バックナンバー

OplusE 2020年11・12月号(第476号)

特 集
ものつくりから医療まで支える光学・画像検査技術
販売価格
1,500円(税別)
定期購読
8,500円(1年間・税別・送料込)
いますぐ購入

ホログラフィーアートは世界をめぐる 新着もっと見る

本誌にて好評連載中

私の発言もっと見る

一枚の写真もっと見る