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第17回 台湾交流録 part 3 ホログラフィーアート講座の始まり

次々に


 夏季講習の準備を進めている最中に,師範大・研究発展處(Office of Research and Development)の所長から新たに連絡がはいった。このホログラフィーの集中講義を,正規のプログラムとして位置づけて発展させていく方針が決まった。Gou学長も了解している。プログラム名は「光学技術と芸術」(仮)とし,学生たちを,私や,台湾出身でニューヨーク在住のホログラフィーアーティスト,Su-Min Linのような作品が作れるようなアーティストに育てるような教育を今後推し進めていくために,どのような講座や設備を整えたらよいかアドバイスが欲しいという内容であった。学長が以前から提案していた科学と芸術の融合を,まさに実践しようとするプログラムと見受けられた。このテーマはMITではすでに歴史のある分野で,ユニークで面白いアーティストや作品を多く世に輩出しているが,台湾の伝統的な芸術やデザイン科を有する総合大学が,学部の縦割りの壁を取り払って新しい分野を創出しようと試みるような動きが起こったことは,大変興味深かった。その後すぐ,Dr. Hsiehから,この「光学技術と芸術」プログラムの一環として,2009年2月から6月に「ホログラフィーアート入門」の開講の決定と,開講の準備が翌2008年度からスタートすることになったと聞かされた。私が参加することがすでに前提となっていて,こちらの事情(長期滞在は難しい)を酌んでいただき,可能な時間だけ担当すればそれ以外は彼女がカバーするというありがたい申し出であった。こうして,2年後開催の前期の講座も受け持つことになるのである。

ひらめき


 この間に,HODIC in Taiwan 2が,2008年12月, 師範大学公館キャンパスの光電工程研究所で開催されることになった。日本からの参加者に用意された宿泊先は,大学のゲストハウスとして利用されている快適なホテルであった。1回目のITRIの時とは事情もだいぶ異なり,ホログラフィーアートへの理解も隔世の感があった。講演会に加えて,ホログラムの展示もされることになり,私も講演と展示に参加することになった。2年前の展覧会では,輸送と展示環境の都合上,送り出せなかった大型のレインボウホログラムを披露する良い機会と考えた。フィルム状態で持参すれば簡単である。ただし現地での設営に工夫はいるが,仮の展示であればさほど難しいことはない。師範大学でHODIC in Taiwan 2の開催が決まったとき,ある考えが私の脳裏に浮かんだ。展覧会や新講座などいろいろお世話になっている大学や学長へのお礼の意味も込めて,ホログラムをそのまま寄贈してはどうだろうか。私ができることはホログラムフィルムのプレゼントであるが,もし作品として,フレーミングなどの施工を施し,キャンパス内に常設して多くの学生たちの目に触れる機会があれば,ホログラフィーアートの紹介として本望である。学内の建物に常設されることを条件に,その旨をDr. Hsiehを通して伝えたところ,大学側は非常に喜んで申し出を受けてくれることとなった。
 HODIC開催の半年前には,常設のための準備作業のやり取りがスタートした。しかし,設置場所選びにまず難航した。ホログラムが絵画や彫刻と大いに異なるのは,光の環境条件である。学長や副学長らが,学内の重要な建物や空間をいろいろと推挙してくれるのだが,ホログラムの展示にはどこも到底無理な場所ばかりで,私は頭を抱えた。結局,HODIC開催時に,借り展示の実物のホログラムを見てもらうとともに,私が学内の候補場所を片端から見て回り,場所の決定をすることとなった。図4 (a)はHodic in Taiwan 2での仮展示の大型ホログラム(From the Grassland #1 , 75 cm× 145 cm)の前での記念撮影である。図4(b)は閉会式の記念写真であるが,できあがってきた画像は,背景の大型スクリーンに,なぜか私のホログラム画像が合成されていた。
 この大型フィルムホログラムの設置プロジェクトは翌年の新講座終了までかかることとなった。 <次ページへ続く>

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