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第16回 台湾交流録 part 2 予期せぬ展開

 台北の市の中心に構える師範大学(図5)は,理工系,人文系の他,デザイン・芸術系も網羅された総合大学である。ここで学ぶ学生たちに,総合大学の利点を生かし,理系,文系,芸術系の縦割りの壁を取り外しクロスオーバーで学べる機会を与えるという新学長の理念に,ホログラフィー技術とアートへの応用は科学と芸術の融合のシンボルとしてぴったりの素材であったようだ。
 ところが,すべての準備も順調に進み,あとは渡航するだけというホログラフィーワークショップと展覧会が直前に迫った時,辻内先生が怪我をされて入院という事態が発生した。残念ながら,辻内先生の講演のご出席は土壇場でキャンセルとなってしまった。すでに展覧会の準備はほぼ完了していたので,結局私一人で出かけることとなった。  まず初日,学長室にGou先生を訪問し挨拶をした。辻内先生が来られなかったことを大変残念がり,昔の,辻内先生と出会った当時の写真を用意して,私に見せてくれた(図6)。学長との会見の後,空輸された作品の開梱作業(図7)に立ち合い,無事に到着したのを確認した後,設営に取り掛かった。作業には電気などのプロの技術者の他,学生たちが実によく働いてくれた。展示のための台座やパネルの製作,照明器具の取り付け位置の工夫など,ホログラムの展示には必ずつきものの煩雑な作業も,何とかクリアーして,無事予定通りのオープニングを迎えることができた。展覧会開催案内の広報活動としては大学の塀の外壁に横断幕が掲げられ(図8),キャンパス内の掲示板数か所にはポスターが貼られた。また,リーフレットが印刷され,作家資料とともに受付デスクに用意され,来場者に渡された。オープニングに先立ってプレスカンファレンス(図9)が開かれたのには,実は少し驚いた。地元メディア数社が来ていた。
 オープン初日には,Dr. Suと彼の同僚の先生たちも新竹から,そして,ノースウエールズで出会った崑山科技大学のDr. Huangも,高雄からかけつけてくれた。学内や学外から多くの人が訪れて,とにかく皆珍しそうに鑑賞していた。いつもは展覧会で,私はアートよりも技術的質問ばかりされ,フラストレーションを覚えるのだが,今回は交通大学や師範大学のホログラフィーの研究者たちが会場に訪ねてくれたおかげで,あちこちで,作品を前にホログラフィーについてのミニ説明会が始まり,とても助かった。学内のデザインや人文系の先生をはじめ,多くの技術系ではない人たちも会場を訪れ,私に熱心に話しかけてきた(図10)。特に,画家でもある女性の副学長は,新しい表現メディアであるホログラフィーに大いに興味をもったようであった。 <次ページへ続く>

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