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第13回 太陽の贈り物シリーズ part 2 U・F・Oと巨石遺跡―黒い森からブルターニュへ

光と語らう


 空気のオブジェシリーズは,その後,2001年練馬区立美術館の吹き抜けホールの天井にも下げられた。この年,美術館では「光とその表現」展が企画され,13人の現代作家たちによる,全館を使った,光をテーマとした展示が開催された。出品された作品は平面からオブジェ,立体,インスタレーションを網羅し,キャンバス,紙,フォト,ホログラフィーから水,金属,アクリル,ネオン,レーザー,モーターなど多様なメディアで構成されていた。公立美術館としてはまれな実験的展示であった。このような展示が実現した理由に,企画したキュレーターから面白い話を聞いた。このような作品の展示には,時に壁や床,天井に手を加えなければならず,現状復帰の手間というリスクを伴う。そのため,多くの美術館では,あまり実験的な作品の展示は敬遠されがちで,展示される場合も多くの制約を受けることが多い。ところで,ちょうどこの美術館は建物が古くなり,近々改修計画がある。改修直前であれば,作家たちは,自由に思う存分,現状復帰を気にせず,空間を使って制作が可能だ。それまで温めていた企画が実現できる絶好の機会と考え実行したと言っていた。幅55 cm, 厚さ約10 cm,長さ6.5 mの空気オブジェ(図8)は,この時展示された私の作品群のうちの一点である。空気の注入には,例のふいごを使うこともなく,美術館サイドの施工業者が用意した送風機によって,一瞬に空気が充満した。あっという間の作業に,黒い森での“労働”を思い出していた。照明には館内の自然光を利用し,1日の時間の経過につれて明るさの環境が変わると,それにあわせるように色の見え方が変わっていく。金属光沢だが,大きさの割には重量感が感じられない不思議な物体としての存在感を発揮していた。
 グレーティングフィルムにはあまり一般的ではないが,透明素材がある。この素材を使った空気オブジェのインスタレーションが図9である。2003年「光をとらえた女性たち」と題した展覧会が,銀座のポーラミュージアムアネックスで企画された。当時,箱根仙石原のポーラ美術館で,印象派を中心とした開館記念展「光のなかの女たち」が開催されており,銀座のアネックスではそれと連動して,現代美術の10人の作家たちによる「光」をテーマの展覧会が企画された。企画案の段階でおよその出品プランは決まっているが,インスタレーション作品の場合,会場の現場下見をした後の追加や展示エリアの変更は常である。会場は1,2階が展示のためのギャラリースペース。建物は中央通りに面し,東向きの道路側の正面入口と吹き抜けの2階の窓は全面ガラス張りとなっていた。ちょうどその窓際に梁が渡っている。梁の幅は70~80 cm,高さは1階の床から4~5 mの場所だった。2階の展示会場からもよく見える空間だ。昼は日光が燦燦と入る。私はひらめいた。「太陽の贈り物」シリーズの絶好の展示空間ではないか。すでに,大型のレインボウホログラムは展示予定であったが,即,追加を申し出た。ミュージアムにとっても,展示エリアではない場所の展示に冒険だったようだが了承された。作業は私自身が1人でせねばならず,数個のオブジェを狭い梁に下に落下しないように設置するのには苦労した。梁の真下は正面の入口だから,落下したらたいへんである。直射日光が入ると,透明なオブジェは,表面と透けて見える内側の両面に鮮やかな色の輝線が表れる。夜間はスポットライトを当てたが,昼と同様の効果が表れる。図9は夜の情景であるが,透明な素材は虚ろで不可思議な生物を誕生させ,なかなか気に入っている。
 作品の展示には,多くの人たちの思いや労働,協力があって実現するものであることを改めて実感している。

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