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第12回 太陽の贈り物シリーズ part 1 ―野外インスタレーション―

歴史と自然にいだかれて


 図1でもわかる通り,50 μmのフィルムは,ポリカーボネートシートにサンドしただけでは平面性を保つことは難しく,表面に細かなしわがたくさん見られる。しわをなくすために,この薄いフィルムにラミネート加工を施し,少し厚いシートに加工した後,ポリカーボネートにサンドした作品を芝山野外アート展に出品した(図3(a))。写真からもわかる通り,円筒形はポリカーボネートだけの透明部分とグレイティングフィルムがサンドされている部分で構成されている。ラミネート加工でしわがなくなり,すっきりしたオブジェに仕上がった。野外アート展の会場は,芝山公園および1300年以上の歴史を誇る芝山仁王尊観音教寺の境内であった。起伏が多くて広い芝山公園は,このインスタレーションが鑑賞できる絶好の環境であった。作品に歩いて近づく時,視点の位置が自然に変わり,オブジェの色が変化するという具合だ。図3(b)はカワセミが飛んでくる自然豊かな仁王尊観音教寺の裏庭の小池に,色鮮やかに輝くホログラムオブジェを浮かべた作品である。寺の本堂の廊下からこの小さな池を眺めることができる。おもしろいことに,太陽の虹の輝きは水と庭木の自然の中に違和感なく融合しているように見えた。
 夏の夜の演出「夜のアートファンタジー」箱根彫刻の森美術館(1999年)のための屋外インスタレーションの昼の情景が図4(a),図4(b)である。約60 cm×60 cm×40 cmのこのオブジェは,異なる色の輝線が複数現れるように変形に作られている。夜は地面に置かれた小さなLEDライトをオブジェクトの中に仕込んだ。この年の秋,取手市で開催された野外展では市内の寺の中庭に落ち葉に見立てたホログラムを池に浮かべた(図5)。日の短い晩秋ではもみじが生い茂る小さな池に太陽が差し込む時間はわずかであったが,寺の境内の赤く紅葉したもみじと池のインスタレーションの対比はなかなかおもしろかった。

(a)芝山公園のインスタレーション

 

(b)芝山仁王尊観音教寺 裏庭の池に浮かぶオブジェ

図3 1998「芝山野外アート展’98」芝山


(a)昼の情景

 

(b)昼の情景

図4 1999夏「夜のアートファンタジー」 箱根彫刻の森美術館


図5 「光の落ち葉」、1999「取手リ・サイクリング アート・プロジェクト」野外展 取手市


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