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第10回 旅するホログラム part 2

アートフェア


 1989年,ドイツのアートキュレーターから連絡が入った。ミュンヘンの画廊がハンブルグのアートフェアに「Riverside」を出品したいという。100の画廊がそれぞれ1人のアーティストを推挙展示する「フォーラムʼ89 ,100ワンマンショー」である(図4(b),カタログ)。世界の画商たちが集まるコマーシャルなアートフェアであり,申し出には少々面食らったが,初体験で興味深かった。設営のためいざ会場に行くと,作品の多くは伝統的なメディア(絵画や彫刻立体作品)で占められ,実験的な作品は皆無,床に広げるホログラフィーインスタレーションはもちろん私1人であった。図4(a)は会場写真,A3サイズのリーフレットとして印刷された。残念ながらビジネスには結びつかなかった。きっと私を呼んでくれたキュレーターやギャラリーは,場を読み違えたか,もしくは時期尚早と思ったことであろう。

 ところで,この作品が戻ってきたとき,現地で調達した小石約300 kgと床に敷いた約3 m×5 mのカーペットまでそっくり送られてきたのには驚いた。素材のすべてを作品と考えて,とにかくすべてを送ってくれたことはありがたいと言うべきか,画廊との意思疎通がうまくいっていなかった結果と言うべきか。いずれにしても,私には現地調達の素材まで保管するスペースは持ち合わせていない。送り出したホログラム以外は,すべて通関手続きをせず,そのまま廃棄処分してもらった。重い石や大きな体積のどうでもよいカーペットの無駄な空輸費用はいかばかりであったろうか。これはビンボーアーティストの理解を超える出来事であった。
 このインスタレーションは,さらにミュンヘンやカナダのモントリオールでも展示され,2006年には国立台湾師範大学でも展示された(図5(a),(b))。この作品は私と同じくらい?,あるいはそれ以上? 世界を旅しているかもしれない。数か月間にわたる展示期間も考慮すると,ワンセットでは足りず,もう1つスペアを作った。しかし,ハンブルグのコマーシャルなアートフェアの時でさえ,作品は売れることなく戻ってきた。これまでコレクターのところに届くという話は一度もなく,現在も私の手元に居続けている。この作品を通して,私は実に愉快で,苦労満載の,退屈しない経験をさせてもらった。しかし,この先,この作品が旅するのを待つのではなく,私の倉庫から出て多くの人の目に触れる環境に置かれることを願っている。

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