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第8回 キエフ・モスクワ・サンクトペテルブルグ

サンクトペテルブルグ


 エルミタージュ美術館を訪ねる機会はモスクワの2年後(2015年)に巡ってきた。長い間訪ねてみたいと望んでいた街である。ISDH(International Symposium on Display Holography) がサンクトペテルブルグで開催され出席した。北のベネチアと言われるとおり,カナルが街中にはりめぐらされ,何本もの美しい開閉式の橋で結ばれている。会期中の夏のシーズンは白夜の真夜中,イルミネーションの飾られた橋が一斉に開く光景は,観光のハイライトだ。
 ここはデニシュークが2006年に亡くなるまで生涯の活動の拠点の地であった。デニシュークのメモリアルルームがあった(図5)。ソ連時代ホログラフィー研究,特に高解像度の感光材料の研究は軍事技術の研究に抵触するという理由で,研究を禁止される不遇の時期があったと聞く。それでも彼はひそかにバスルームを改良し,研究を続けていたという。メモリアルルームは,そのゆかりの部屋とのことであった。生前デニシュークが力を注いできたホログラフィーミュージアム(図6)はなかなか見ごたえのあるコレクションがそろっており,一般にも公開されている。貴重な宝物類が,大型で深度の深いクリアな像としてホログラムに記録されている。
 ISDHについては あらためて別の機会に述べるが,カンファレンスと並行してホログラフィ展,Magic of Light(図7)が開催され,私のパルスマスターのホログラム(図8 ,図9)も展示された。この年,サンクトペテルブルグでは,インペリアル・イースター・エッグのミュージアムが新しくオープンした。そこの貴重な一連のコレクションがフルカラーのホログラムに撮影されて,この展覧会に展示された。宝物の美しく精巧なデザインと実物と見まがうクオリティーの高いホログラム像は多くの観客の目を引いた。ギリシャのHIH(Hellenic Institute of Holography) が制作したもので,この展覧会を企画し,展示はその後,ツアーエキシビションとして各国の都市を回っているようだ。今(2019年春)は中国の上海で開催され,入場に長蛇の列をなす観客の様子が伝わってきている。私のホログラムもHIHのコレクションになったが,一緒に展示されているかは関知していない。私の手元を離れた作品は私の知らない世界中を旅しているのかもしれない。
 やはり世界は小さくなったようだ。

図5 ユリ・デニシューク記念コーナー サンクトペテルブルグ 2015


図6 ホログラム博物館 サンクトペテルブルグ


図7 Magic of Light ポスター サンクトペテルブルグ 2015


図8 Magic of Light 展示作品 サンクトペテルブルグ2015


図9 作品と筆者

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