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第7回 アンダーグランドアート―Retretti Art Center・Finland―

大深度地下空間・マーブルホールとスーパーカミオカンデ


 フィンランドのプロジェクトからさかのぼる数年前,私は偶然面白い研究プロジェクトに参加する機会を得た。ロックメカニクスの学者である櫻井春輔氏(神戸大学名誉教授)の提唱により,付加価値を持った新しい地下空間利用の可能性を探る研究プロジェクトが複数発足し,その1つに誘われたのである。図5の(a)と(b)は,1993年に行われたホログラムを取り入れた光と音のイベント実験で,場所は岩手県の釜石鉱山の地表から300 m地下に降りた白色石灰の採掘跡の空間である。炭坑ではないので引火性のあるガスが発生する心配もなく,美しい大理石の“宮殿”(マーブルホール)といった風情である。その後,フィンランドに地下空間のアートセンターがあることを知り,そこの展覧会に招待されることになった時は,研究プロジェクトの延長として技術と予算の両面からサポートを受けることができた。
 またスーパーカミオカンデは,富山県の神岡鉱山山頂から1000 m下に掘られた,直径約40 m,高さ50 m以上の地下大空間の実験装置である。1994年にその空洞の開削が完了した時,完成祝いの式典のアトラクションとして動的な光の色と音の演出(図6)を手がけた。地下大空間は音も光も完全に遮断が可能な,実に不思議な空間であり,実験装置の完成の暁にはここは純水で満たされ,永遠に人の目に触れる機会はない。後に,この施設は日本に2つのノーベル賞をもたらした空間であった。
 一連の地下空間にまつわる出来事は,どれも非常に印象に残る体験であった。

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