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ドローンのビジネス活用に関する展望小林啓倫

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1. ドローン・ビジネスへの期待と不安

 2030年には、国内で業務用に使用されるドローン(小型無人飛行機)だけで、1000億円を超える市場が誕生する――今年6月、日経BPクリーンテック研究所はこんな予測を発表した。またこの予測では、2015年の同市場を約30億円と推定。今後15年間で30倍以上に成長するという計算になる。  ドローンはもともと、軍事用の無人飛行機(Unmanned Aerial Vehicle、UAV)を指す愛称として、第2次世界大戦頃から使われてきた言葉だ。しかし2000年代後半から、パーソナルユースを目的とした安価で高性能の小型UAVが市場に出回るようになると、これを既存のラジコン飛行機/ヘリコプター(大型で高価、機体制御も難しい)と分ける愛称として定着。それが業務目的にも使えるほどの性能を持つに至ったことで、ビジネスの現場で「ドローン」と言えば、遠隔操縦で爆撃を行う物騒な機械ではなく、さまざまな産業で活用し得る夢の機械を意味することが一般的になった。  そうした期待を背景に、いま多くの調査機関から、ドローン・ビジネス(ドローン本体の販売+それを使ったサービスの提供)が数百億から1000億円程度の市場を形成するとの予測が発表されるようになった。確かにこの数字は新しいビジネスへの期待を抱かせるものだが、それでも自動車や建設、医療など、数十兆を超える主力産業と比べればはるかに見劣りする。こうした予測を行うマーケティング・リサーチの市場自体、2014年時点で1885億円に達している(日本マーケティング・リサーチ協会の調べによる)。いまから15年かけても、ドローン市場はその半分ぐらいにしか成長しないのだ。  ならば全世界ではどうか。ビジネスと技術に特化したニュースサイト、Business Insiderは、2024年までに民間でのドローン活用市場が30億ドルを突破すると予想している。ただこれでも3600億円程度の規模で、日本で言えばカラオケボックス市場の3979億円(2014年度、全国カラオケ事業者協会の調べによる)にも届かない。ある程度の事業規模が見込めないと投資しづらい大企業では、これは少し不安を抱かせる数字だ。  さらに2015年には、ドローン普及に水を差すような出来事が相次いだ。4月の首相官邸ドローン侵入事件を皮切りに、5月の善光寺法要行事におけるドローン落下事件、9月の姫路城ドローン激突事件など、ドローンには危険性も潜んでいることを十分に認識させた。これらは個人の操縦者が引き起こした事件だが、私有地でのフライト中や実証実験中の事故も含めると、企業が扱うドローンでもさまざまなトラブルが起きている。はたしてドローンのビジネス利用は、主要産業と呼べるような規模にまで発展していけるのだろうか。 <次ページへ続く>

小林啓倫

 株式会社日立コンサルティング シニアコンサルタント。1973年東京生まれ。筑波大学大学院修了後、国内システムエンジニアリング企業にてITコンサルタントとしてキャリアを積む。米バブソン大学にてMBAを取得後、外資系コンサルティング企業、国内ベンチャー企業を経て、2005年から現職。著書に『ドローン・ビジネスの衝撃』(朝日新聞出版)、『今こそ読みたいマクルーハン』(マイナビ出版)、訳書に『ソーシャル物理学』(草思社)、『データ・アナリティクス3.0』(日経BP)など多数。

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