画像センシングの最前線

三次元計測の原理と光の性質広島市立大学 日浦 慎作

2.2 光速を用いる方法

 計測装置から発した光が被写体で反射し,再び計測装置まで戻ってくるまでの時間を何らかの方法で求めることにより測距する方法である.光を極めて高速に点灯・消灯する必要があることから受動的計測はほぼありえない.1つ目の手法は,ごく短時間だけ発光する光パルスを被写体に照射し,その光が帰ってくるまでの時間を実測する方法で,これを筆者は「時間差測定法」と呼んでいるが,近年では直接法とも呼ばれる.光エネルギーが短時間に集中する上,ビーム状にして対象物体上の限られた領域に照射することで,太陽光の影響が大きい屋外環境でも計測可能な装置も多い.ただし一度に1点しか計測できない装置が多く,対象全体の形状を得るためには順次走査が必要で,多点の計測には長時間を要する.
 もう1つの方法は光を周期的に点滅させ,その光が物体との間を往復するときの時間遅れを位相差として検出する方法である.これを筆者は「位相差測定法」と呼んでいるが,やはり近年では間接法と呼ばれることがある.また英語では光飛行時間を意味する Time of Flight (TOF) の呼称が時間差測定法と位相差測定法の両者に対して使われるようになってきており,それぞれ direct / indirect TOF と呼んで区別される.位相差測定法では受光強度の変化を必ずしも直接電気信号に変換する必要はなく,センサ上で同期検波する(位相ずれ量を電荷量として検出する)ことができるため,専用の受光センサを用いることで多画素化を図ることができる.従来から産業用のセンサも存在したが,2013年にはこの原理が2代目の Kinect に採用され急速に一般化した.時間遅れをアナログ量である画素値として読み出してから距離に変換するため,時間差測定法に比べ測定条件による計測値の変動が大きいほか,距離が大きくなると位相値に曖昧性が生じるために,屋内環境など,時間差測定法に比べ短距離の計測に利用されることが多い. <次ページへ続く>

広島市立大学 日浦 慎作

1972年生.1993年大阪大学基礎工学部制御工学科飛び級中退,1997年同大大学院博士課程短期修了.同年京都大学リサーチアソシエイト,1999年大阪大学大学院基礎工学研究科助手,2003年同助教授.2010年広島市立大学大学院情報科学研究科教授.2008-2009年マサチューセッツ工科大学メディアラボ客員准教授.三次元空間の画像計測と反射現象・表面質感の解析,コンピュテーショナルフォトグラフィ等の研究に従事.1993年電気関係学会関西支部連合大会奨励賞,2000年画像センシングシンポジウム優秀論文賞,2010年情報処理学会山下記念研究賞,2012年MIRU優秀論文賞等受賞.電子情報通信学会,情報処理学会,日本バーチャルリアリティ学会各会員.博士(工学).

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