セミナーレポート
高性能UAVを用いたインフラ点検支援システム(株)デンソー 技術開発センター Robotics開発室 加藤 直也
本記事は、国際画像機器展2016にて開催された特別招待講演を記事化したものになります。
可変ピッチプロペラを採用し,近接にして一定距離を維持
インフラ点検システムのハードウエアは,ドローンを使います。大きさは最大で1175㎜。構成部品の特徴としては,風に流されないようにするために可変ピッチプロペラを使用。床版裏を見るために上下測位センサーを持ち,被写体との距離を確実に保ちます。また,飛行制御用アンテナ,撮影システム,映像伝送用アンテナを備えています。システムは共同開発で進めており,ハードウエアはヒロボー(株)で開発,デンソーは制御ソフトや画像解析ソフトを開発しています。カメラはUAVに上向きに積んでいます。ジンバルという装置を用いて,ピッチ(仰角)0°(水平)~150°まで撮ることができます。床版の裏や桁,橋脚など橋下の被写体に近接して一定距離を維持し,風の影響を抑え,定められた高度を移動します。
撮影システムは,2400万画素で2.7m以内に近づくことで,現在点検士が行っている500万画素で0.5mと同じ画像が撮れるようになっています。このようなシステムで,箱桁橋,トラス橋,鉄橋などいろいろな場所に飛んで行きます。
箱桁橋では,風が強くても橋下2.5mを維持し,アーチ型になっていても距離を維持しながら飛んでいきます。また,箱桁橋の桁の中に入り,パイプの中を通り抜けて点検することも可能になっています。
撮り方は2通りあります。最初は橋梁全体を把握するために広角レンズで重複しながら撮り,重複部を重ね1つの絵にしていきます。次はズームレンズで橋の下を全面撮っていきます。一方で,前回の点検記録があるような損傷部分は,そこだけを狙って飛んで行くこともできます。
ズーム写真と広角写真を比べることで,浮きや鉄骨露出,桁の継ぎ目の中のひび割れ,漏水痕,補修跡,新たな浮きなどを見つけることができます。
ひび割れの幅は0.3㎜までは見分けることができます。今後は,さらに写真の性能を上げ,細かい傷も見つけられるようにしたいと考えています。
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(株)デンソー 技術開発センター Robotics開発室 加藤 直也
慶應義塾大学理工学部卒業。1984年デンソー入社後 エンジン系製品設計。エンジンシステム研究開発技術企画を経て2014年からロボットシステム開発に従事。