セミナーレポート

ICT×ロボット農業に必要な画像技術北海道大学大学院農学研究院教授 野口 伸

本記事は、国際画像機器展2015にて開催された特別招待講演を記事化したものになります。

土地利用型農業,施設型農業におけるロボット技術

 土地利用型農業におけるロボット技術として,当研究室では3次元カメラ&パン方向制御ユニットによる自走追従機能を備えた運搬ロボットを開発しています。重たい野菜などの収穫に威力を発揮し,蛇行しても人の後に追従していくことが可能です。別の人間がいても,追従対象の特徴量を抽出し,追従していきます。
 ロボットの実用化に対する大きな課題となっているのが安全性です。ロボット農機は今,耕うん,代かき,田植え,収穫などを無人で行っています。農林水産省の安全ガイドラインでは,リスクアセスメントを行い,保護方策を取ることが求められています。そこで重要になるのが障害物検出の技術で,そこではビジョンセンサーが有効です。私たちの開発したロボットトラクタでは,安全対策として360度監視できる全方位ステレオビジョンセンサーをつけ,障害物検出を行っています。ただし,作物の中で人や障害物を検出するとなると車載搭載型ビジョンセンサーでは限界があります。そこで取り組んでいるのが,ロボットトラクタにドローン搭載ビジョンセンサーをつけ,空から障害物検出を行うというものです。ドローンは給電ケーブルで給電するため飛行時間に制限はありません。
 施設型農業におけるロボット技術として,普及が期待されているのがイチゴの収穫ロボットです。収穫作業では人手不足が問題になっており,イチゴは高付加価値があり,ロボット化が実現しやすいことが挙げられます。ステレオビジョンを使い位置を検出。熟度判定アルゴリズムにより,商品価値のあるものだけ収穫をします。イチゴは重なりなどもあり,100%収穫ができませんので,目標を60%にしています。残りは次の日に採るか,難しいものは人間が採ります。加えて,日本人は品質に非常にこだわるため,切らなければいけない果柄切断位置を検出する技術も取り入れられています。収穫ロボットの大きなメリットは夜間作業できるということにあります。

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北海道大学大学院農学研究院教授 野口 伸

専門:生物環境情報学,農業ロボット工学
1990年,北海道大学大学院農学研究科博士課程修了。1990-1996年,北海道大学農学部助手。1997-2003年,北海道大学大学院農学研究科助教授。2004-現在,北海道大学大学院農学研究院教授。

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