セミナーレポート

社会インフラ維持管理のための画像処理技術の可能性と期待東京工業大学 小林 彬

本記事は、国際画像機器展2014にて開催された特別招待講演を記事化したものになります。

■画像処理的技術を活用し,亀裂発生予知と点検作業を連携

 橋梁に使われているシース管内部のX線CT撮影をすると,内部の鋼線が一本一本見え,内部に充填されているグラウトの様子がよく分かる。しかし,現場に持ち込めるかどうかが問題で,持ち込むのはなかなか難しいため,近似的な方法で分かるようにしていく。細さが分かれば,危険レベルを把握することができる。橋梁の劣化は予知が大事になる。そこで以前は,交通量が劣化要因であるとして,時間の経過に伴う交通量の累積で判断していた。最近では,もう少し進んで,橋梁の疲労の結果として,橋梁に変位,たわみが生じる現象に着目した橋梁劣化モニタリングが考えられている。そこではまず発生変位やたわみの前兆を早期に発見し,対策を行う。そして,別に異常個所が発生したら,それを早期に発見し,対策を行っていく。こうした形で点検時期と予測方法をうまく組み合わせて,管理の高度化・効率化を図っていくのである。
 橋梁モニタリングの考え方のもうひとつの例として,10t車換算累積軸数が3,000万回で疲労亀裂が始まることをもとに,センサーを利用して,その累積軸数を把握,疲労亀裂予知情報として使っていく。さらに車両重量だけでなく,地震,強風,積雪など他の橋梁疲労要因の影響も測定して加算し,10t車換算累積軸数に換算した疲労亀裂発生予知指標も使う。橋梁の疲労損傷の本質的原因は橋梁に働く各種の曲げ応力にあるため,疲労亀裂発生予知指標を使うことで,亀裂発生を10t車換算累積軸数より早く予知することができる。こうして,点検作業支援と橋梁維持管理運用システムは,異常検出・常時モニタリング層のA層,点検層のB層,点検指示判定用アルゴリズム層のC層という3層の協調によって行うことが可能になる。
 このように,社会インフラのモニタリングは今後本格化し,モニタリングは近接目視の補完的支援及びその高度化から進められていく。リスクマネジメントの観点からは亀裂の進展,鋼材のやせ細り監視が重要であり,そのためには画像処理的技術の活用に大きな期待が寄せられる。そして,メリハリのある維持管理のためには,何らかの予防保全技術が必要とされている。

東京工業大学 小林 彬

1969年 東京工業大学大学院博士課程修了(制御工学専攻)工学博士 1987年 東京工業大学工学部教授 2005年 東京工業大学定年退職 名誉教授 2005年 大学評価・学位授与機構教授(?2008年) 帝京平成大学教授(2012年定年退職) 2012年 次世代センサ協議会副会長&社会インフラ・モニタリング研究会代表 現在に至る

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