セミナーレポート

ドライバの安心を支えるクルマのUI(ユーザーインタフェース)のための画像処理技術(株)富士通研究所 水谷 政美

本記事は、国際画像機器展2014にて開催された特別招待講演を記事化したものになります。

■接近物検知や視覚支援,車載逸脱警報などにより安全運転を支援

 2番目の技術は「接近物検知技術」です。見通しの悪い交差点での頭出し時など,車両への接近物をいち早く検知し,ドライバに知らせます。これには形状に依存しない動き検知をベースにした接近物検知技術が使われています。また,遠方の微小な動きの接近物を早期に検知するために,省メモリ・小回路規模の動き検知を実現したことも特徴になっています。開発方式はオプティカルフローに基づいています。従来,遠方の微小な対象を早期に検知するためには,過去の全フレームを記録保持しなければならずメモリ量の増大につながっていました。そこで特徴点の画像小領域のみを記録保持することで,無駄なメモリを削減。小さな動きも安定的に検知できるようになりました。
 3番目の技術は「超広角3Dレーザとカメラによる視覚支援技術」です。これは1番目の全周囲立体モニタ技術の拡張技術で,歪みがなく直感的にわかりやすい車両周辺の立体映像を合成表示。込み入った運転状況でも,周囲との接触の危険性がわかりやすいように,接触リスクを透過的に重畳表示します。これらを実現するために,超広角・高精細の3Dレーザレーダも開発しました。レーザをパルス出射し,対象物から戻ってくるまでの往復時間を計測することで距離を算出。独自開発のMEMSミラーによる走査角度拡大光学方式で,広範囲を高精度・高分解能で計測します。
 4番目の技術は「広角カメラ向け車線逸脱警報技術(LDW)」です。狭角向けはすでに市場に製品がありますが,我々がターゲットにしたのは広角カメラです。現在,商用車を中心に広角カメラを有したドライブレコーダが普及しており,専用カメラ(狭角)の追加なしで安価に導入できるという特徴があります。また,通常走行時に予防安全機能(逸脱警報)や,逸脱時の状況を記録し,事後の安全運転教育の質向上に役立てることができます。広角カメラの課題であった解像度不足を複数の映像で補い,合成画像で車線形状を正しく推定。これらにより,実路データ評価で車線逸脱警報の成功率95%以上を実現しています。

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(株)富士通研究所 水谷 政美

1995年,東京工業大学大学院修士卒業,同年,(株)富士通研究所入社。
以後,画像処理・画像認識技術および,ITS分野を含む応用システムの研究開発に従事。
2003-2004年,米国コロンビア大学客員研究員。

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