セミナーレポート

ニュートンの夢がついに実現 ~多波長干渉画像処理が拓く新たなナノ計測の世界東レエンジニアリング(株) 北川 克一

本記事は、国際画像機器展2012にて開催された特別招待講演を記事化したものになります。

高さ測定を膜厚測定に応用,シャボン膜の膜厚測定に成功

 さらに,キャリア縞を入れずに計測できるようにしようと,干渉色解析によるワンショット3次元計測技術の開発に取り組みました。従来から,干渉色を利用しようといろいろと研究されていますが,干渉色が照明系などに依存するため,頻繁な校正が必要なこと,色空間の中で近接した色相が周期的に現れ,識別が困難だという問題がありました。そこで,それを干渉色の理論モデルを作って解決しようと,GMF法という計測アルゴリズムを開発しました。GMF法は計算負荷が高いことから,適合点数に限界があり,それ以外の点はモデルパラメータを利用する高さ推定法(ACOS法)というアルゴリズムで計算することにしました。これによって,50nmの標準段差がキャリア縞を入れる方法と比べて,非常にクリアな形で測定できるようになりました。
 こうして研究する中で,GMF法が高さだけではなく,膜厚測定に使えると気付きました。従来の光学的膜厚測定技術は,点計測で分布測定に長時間かかること,水平分解能が低いこと,という問題がありました。そこで,GMFT法というアルゴリズムを開発,膜厚0~500nmの標準ウエハーを試料にして,顕微鏡で測定したところ,6点の膜厚を6msで計算することができました。次に顕微鏡ではなく,広視野型測定装置を作り,ウエハー全面の膜厚を0.3s/140万点の速度で全面計測できました。さらに,その装置でシャボン膜の測定に挑戦し,最近では0~1μmの流動変化する膜厚をほぼリアルタイムで測ることができるようになりました。これによって,ニュートンの夢だったシャボン玉の膜厚測定を実現することができました。

東レエンジニアリング(株) 北川 克一

1964年東京大学計数工学科卒、同年東レ(株)に入社。1989年より画像処理・レーザ光学を応用した半導体およびFPD用検査機器の研究開発に従事。2000年より東レエンジニアリング(株)勤務、現在に至る。計測自動制御学会より技術賞(2001年度)受賞。ViEW2003にて小田原賞受賞。手島記念財団発明賞受賞(2004)。精密工学会より技術賞(2011年度)受賞。2011年博士(情報理工学;東京大学)。計測自動制御学会認定計測制御エンジニア。

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