セミナーレポート

QoL向上のための画像センシング技術慶應義塾大学 青木 義満

本記事は、画像センシング展2017にて開催された誰にでもかる特別講演を記事化したものになります。

QoL向上のための画像センシング事例

 医療の分野では,成長期の子どもで背骨が曲がってきてしまう側湾症が問題になっています。これまでの検査では,専用の装置でモアレ画像を背中に投影し,左右の非対称さを計測し,評価していました。それを,モアレ画像とX線画像を学習させることで,モアレ画像だけでレントゲン写真を撮らずに内部の骨格姿勢を推定することを可能にしました。今は非接触の3次元ボディースキャナーによる3次元情報から内部の骨格姿勢を推定するという取り組みを行っています。
 スポーツの分野では,より良い動作を素早く提案し,選手のイメージトレーニングに役立てるというモーション・シンセサイザーを開発しています。これは,今までのようなモーションキャプチャーに代わり,デジタルカメラやスマートフォンで撮った動画像から実現可能なものです。撮影した自分の動作と,お手本であるmo-capデータを画像処理で重ね合わせ,ディープラーニングによる姿勢推定技術を使い,投球障害が生じやすい動作を生成します。これにより,けがをしない,かつパフォーマンスを向上させる動作パターンの習得を支援できます。また,ラグビーの試合で選手とボールの位置を検出してマッピングすることで,戦術分析やシーン解析に役立てるシステムを実現しています。
 食の分野では,食の健康を支える画像センシングとして「FoodLog」への応用があります。これは,自分が食べた食事画像を記録し,パターン分析で栄養やバランスの分析ができるというアプリです。また,誤嚥(食べ物が気管に入ってしまうこと)のリスクを早期に発見できるシステムを開発しています。これは,喉に照射した輝点の動きから喉形状の立体画像を再構築し,のど仏の動きを自動追跡するというものです。そのほか,大量の脳は信号の事例に基づくパターン学習により,“心地よさ”“興味の度合い”などの感性情報をリアルタイムに取得する脳波センシングによる感性評価などへの応用も進めています。
 画像からの物体認識・シーン認識はまだ入り口の段階です。そこから,人の感覚や感性,暗黙知などのより複雑な事象の抽出・評価・理解まで進めることで,画像技術の世の中への普及がより広がっていくと考えています。

慶應義塾大学 理工学部電子工学科教授 青木 義満

2001年 早稲田大学大学院理工学研究科博士課程修了,博士(工学)。2002年 芝浦工業大学工学部情報工学科専任講師。2005年 同助教授。2008年 慶應義塾大学理工学部電子工学科准教授。2017年 同教授。主な研究分野は,画像認識,人工知能,パターン認識。
[主な学協会活動歴]
電気学会知覚融合センシング技術の実利用化協同研究委員会委員長,計測自動制御学会パターン計測部会主査,日本顔学会理事,画像センシングシンポジウム(SSII2015-2016)実行委員長,画像センシング技術研究会組織委員,ステアリングコミッティ委員長,NEDO技術評価委員等。

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