セミナーレポート

フロント技術を活用した新しい健康・医療支援への取り組み(株)富士通研究所 柳沼 義典

本記事は、画像センシング2016にて開催された誰にでもわかる特別講演を記事化したものになります。

高齢者や患者が安心して暮らせる社会を目指して

 QOL(Quality Of Life)の向上に向けての取り組みでは,アイルランドで行っているスマートハウス(居住空間)の実証活動;KIDUKUプロジェクトが挙げられます。
 高齢者や患者が安心して暮らせる社会を目指して,私たちは医療を病院の中だけでなく日常生活に拡張していきたいと考えています。病院での詳細な検査はとても重要ですが,日常の行動の中でもわかることがあります。例えば,具合が悪いと,歩き方などの普段の行動にもそれがにじみ出てくるものです。そのような日常の行動を把握することで,早めにアシストしたり,病院に誘導したりすることが可能になります。KIDUKUプロジェクトでは,転倒患者で退院した方に一時スマートハウスに住んでいただき,ハウスに埋め込んだ約110種類のセンサーと患者につけたウェアラブルセンサーから日常生活における大量のデータを収集。センシングデータから個人の歩き方に合わせて「歩行」や「ドアの開閉」などのイベントを抽出し,これまで医療従事者が気づかなかった隠れた異常を発見するということを行っています。
 これらの技術の想定する利用シーンとしましては,現場の看護師や介護士が患者の自宅で状態を把握し,検査に活用する。あるいは医師が日々の患者の動きを見ながら状態を把握することができ,的確な指示ができる。患者自身も自分の回復の様子を把握できるということが考えられます。そして,最終的には人へのフィードバックが重要になるでしょう。そのひとつとしてロボットの活用を進めています。すでに,癒しを提供しながらその人の状態をセンシングする子ぐま型ソーシャルロボットを開発しています。また,最近発表したものとしましては,Robopinというロボットがあります。6関節の構造とLEDでの表現により,人とのインタラクションとしての活用を目指しています。
 このように,クラウドで情報を収集し,処理をし,医師を介してサービスを提供する,あるいはその人の近くでインタラクションするといったことを,ヘルスケアの分野においても確実に実現していきたいと考えています。

(株)富士通研究所 柳沼 義典

株式会社富士通研究所に入社後,ニューラルネットワーク,並列計算機アプリケーション,データマイニングの研究開発に従事。
1999年から2000年まで,英国Imperial College訪問研究員。
2009年よりヒューマンセントリックコンピューティングの技術開発,現在,次世代医療の実現に向けて研究開発を推進中。

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