セミナーレポート

車載カメラで危険を検知し,安全運転を可能にする(株)豊田中央研究所 町田 貴史

本記事は、画像センシング展2012にて開催されたセミナーを記事化したものになります。

超並列高速計算で画像をリアルタイム表示するGPU

 交通事故の死亡者数数は過去10年以上減り続けており,2011年は4611人と日本がモータリゼーションを迎える前の昭和20年代後半と同レベルになっています。その背景はさまざまですが,自動車メーカーが衝突を事前に察知し,衝突時の被害を軽減する安全システムを開発,装備していることも大きな要因です。トヨタ自動車(株)はプリウスにミリ波レーダーで前方車両を検知,衝突の可能性があるとブレーキが作動する「TOYOTAプリクラッシュセーフティ(PCS)」を装備,富士重工業(株)は車載カメラで認識する「SUBARU Eye Sight」を車に搭載しています。そうした中,車に搭載したカメラやレーザーを使って,道路や周辺の歩行者や車両を検出し,運転者にとって危険かどうかを判断するITS (Intelligent Transport Systems:高度道路交通システム)技術は処理が複雑で,高速の演算が求められます(図1)。
 画像処理の高速化には,計算量を少なくするやり方とCPU(Central Processing Unit)を増やして,並列処理する2つの方法がありますが,計算量を少なくしようとすると,性能が劣化してしまいます。そこで,性能を維持・向上させながら,処理速度を上げるには,並列処理が望ましいのですが,現在のCPUは周波数向上が頭打ちで,これ以上高速な処理は望めません。そのために,コアプロセッサの並列化で,劇的に性能を向上させるGPU(Graphics Processor Unit)が注目を集めています。CPUの最新モデル(Intel Ivy biride)は4コア,クロック周波数が3.5GHz,理論演算性能が60.0GFlopsであるのに対して,GPU(nVidia GK104)は1536コア,クロック周波数は915MHzで,理論演算性能は3090GFlopsと,CPUの60倍です。このように,GPUはコア単体の性能はCPUよりもはるかに劣りますが,膨大なコア群による並列演算で,処理の劇的な高速化が可能です。

図1 車に搭載したカメラやレーザーで歩行者や車両を検出するITSは,さらなる高性能化で高速の演算が求められている

 GPUは主に画面出力を行うパソコン(PC)パーツで,滑らかな描画やリアルタイム表示を行い,超並列高速計算が可能です。コンピューターではグラフィックアクセラレータを使って,ポリゴンという平面の塊をうまく計算して配列し,3次元の画像を表示します。ところが,さらに表現力を向上させようとすると,計算能力が足りないため,GPUが作られました。そして,それを使って,光源や陰影の処理を行う,ピクセルシェーダーや頂点シェーダーなどのシェーディング機能が生み出されました。

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株式会社豊田中央研究所 町田 貴史

1998年大阪大学基礎工学部情報工学科卒業。2002年奈良先端科学技術大学院大学・情報科学研究科博士後期課程単位取得退学。同年大阪大学サイバーメディアセン ター助手。2006年(株)豊田中央研究所入社。博士(工学)。コンピュータービジョン,コンピューターグラフィックスの研究に従事。情報処理学会,IEEE各会員。

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