セミナーレポート

断層撮影にとどまらず,機能や動態が把握可能に藤田保健衛生大学 片田 和広

本記事は、画像センシング展2012にて開催された特別招待講演を記事化したものになります。

一層の高時間・高空間分解能の実現と被ばく量低減が進む

 これで写真が撮れるようになったことから,ムービー撮影が可能となり,3次元に時間軸,そしてCT値の5次元で情報を得られるようになりました。その結果,例えば,脳の血管の異常も造影剤が入り,流れていくところまで分かるようになり,脳や心臓が形だけでなく,動きまで撮れるようになりました。こうして,大脳動脈閉塞や急性心筋梗塞のバイパス手術後の状態,肺がんのダイナミックスキャン,手の悪性腫瘍,脳動脈瘤の拍動,嚥下の診断とリハビリの評価など,動く状態や機能を撮るようになっています。面検出器CTによる動態・機能検査は広い範囲で有用性があり,従来のCT・X線検査で得られない情報を提供することから,かなりの領域で必須ないしルーティン的な検査になっています。

図2 「Aquilion ONE」の撮影例

そして,2012年には完全新設計で,回転速度が0.275秒と大幅に向上し,被ばく線量が第1世代の3分の1になった第2世代「Aquilion ONE」が発売されます。回転速度が速くなったことで,心臓は今までよりきれいに停止して見えるようになり(図2),嚥下運動は声帯の動きまで分かるようになりました。
 CTの今後ですが,2002年にはMicroCTの人体用プロトタイプが試作され,0.25ミリという高い分解能の画像が撮れることが分かっています。しかし,莫大な費用がかかることから,製品化が進んでいませんが,そろそろスタートする時期だと思います。また,注目されているのがフォトンカウンティング(光子計測法)です。X線を雨とすると,今までのCTは雨量何ミリと量で測定していました。それを粒で数えるもので,検出器に入射するX線光子を少なくし,離散的にとらえるもので,当初は3しきい値,4帯域程度に分けて計測します。これによって,高時間分解能・高空間分解能が実現し,被ばく線量がさらに10分の1になると見込まれています。
 CTは登場後40年経た今でも,中心的な画像診断法としての位置を保っており,その間,撮影時間は短く,分解能は細かく,被ばくは少なくなりました。また,形態のみの検査から,動態機能検査へと移行し,将来的にはX線を情報キャリアとする,全撮影法を代替する可能性があります。今まで,生命体がものを食べ,飲み込み,消化して,呼吸し,心臓が拍動するという生命現象を可視化することはできませんでした。それを面検出器CTが初めて実現しましたが,CTの医学利用はまだ緒についたばかりで,これから大きく進むことは確実です。

藤田保健衛生大学 片田 和広

1972年大阪医科大学卒業,名古屋市立大学第二外科,名古屋保健衛生大学脳神経外科を経て,1985年藤田保健衛生大学医学部放射線医学教室助教授,1987年同大衛生学部診療放射線技術学科教授。2001年4月より同大医学部放射線医学教室教授。1975年に国産第1号CTの導入をきっかけとして,現在までCTの開発に従事。専門分野は神経放射線学。ヘリカルスキャンの実用化により日経BP技術賞(1992年),通商産業大臣賞(1993年)受賞。

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