セミナーレポート

誰にでも分かる,サービス現場でのユーザー特性の画像センシング技術 ~ユーザーの体形,運動,行動センシング~産業技術総合研究所 持丸 正明

本記事は、画像センシング展2011にて開催された特別招待講演を記事化したものになります。

 今日はせっかくの機会ですので,わたしの研究と,それがどのようにビジネスにつながっているのかを紹介したいと思います。ご聴講の皆さんが,もしコンピュータービジョンの分野にかかわっているとすると,わたしの人間工学やバイオメカニクスに関する研究は遠いところにあるといえます。それではなぜ,皆さんの前でわたしが講演するのかというと,道具として画像センシングを使っているからです。今日は画像センシングにとってアプリケーションに近いお話をさせていただきます。

システム中最も弱いのは人間

 われわれがやっている「デジタルヒューマン工学」とは,コンピューターで人間のいろいろな体形や動きを再現して,それに基づいて車や携帯電話の使い勝手を調べたり,服の設計に活用する学問です。われわれはそのために図1のような人形「Dhaiba(Digital Human Aided Basic Assessment system)」を利用しています。お察しの通り,この名前の由来はわれわれの研究所が東京のお台場にあるからですが,スペルに“h”が入っていることが大事です。この“h”が入っていないと,Googleで検索した結果がフジテレビに勝てません。この“h”さえ入っていれば,必ずデジタルヒューマン工学研究センターが最初にヒットすることになります。産業技術総合研究所(以下,産総研)では前述のような研究を,いくつか具体的なアプリケーション,すなわち企業との共同研究を通じながら確立しています。今日はそうした内容を紹介しながら話を進めていきたいと思います。

図1 Digital Human Aided Basic Assessment system:Dhaiba

  “Human, the weakest link”という言葉は,われわれのセンターができたときに,前身となるデジタルヒューマン研究ラボ創立者の金出武雄先生が掲げた標語で,「人は最も弱いくさりの連鎖である」という意味です。例えば自動車というものは,CAD(Computer Aided Design)とCAE(Computer Aided Engineering)によるモデル化が進んでいて,設計段階で非常に細かな解析ができるようになっています。ところがよく考えてみると,自動車というのは何が「自動」なのかよく分からないところがあります。勝手に走ってくれるわけでもなければ,勝手にどこかに行ってくれるわけでもありません。基本的に自動車は,ドライバーが操作しないと動かないことになっています。そうして,自動車で起きる問題といえばほとんどの場合,人間の側で起きることが一般的です。そうやって考えると,自動車自体はモデル化が進んでいる割に,肝心のドライバーのモデル化があまり進んでいないことに気付きます。クルマとドライバーがセットになった自動車というシステムの中で最も弱いのは人間ということになります。これが“weakest link”と呼んでいる理由です。
 この問題を解決するために,デジタルヒューマン工学という学問がスタートしました。最終的なゴールは,この自動車のようなレベルで人間が記述できることを狙っています。そのために,実際の製品やサービスに対して,人間をコンピューターの中へ取り込み,それをモデル化して適合性を評価できるようにしようとしています。

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産業技術総合研究所 持丸 正明

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