セミナーレポート
誰にでもわかる車載画像処理 ~車の周囲を見る技術・見せる技術~日産自動車(株) 下村 倫子
本記事は、画像センシング展2010にて開催された特別招待講演プレインタビューを記事化したものになります。
ソーシャルメディア利用の可能性
聞き手:現在,産業用カメラメーカーなどは非常に大きな期待を持って自動車メーカーの動向を注目しています。理由は,今まで搭載されていなかったカメラが,今後,1台のクルマに複数台搭載されるようになるからです。これはカメラメーカーにとって大きな市場の広がりを意味しています。こうした方向性に対してどのように思われていますか?
下村:これは私個人の意見なのですが,画像認識で安全を確保するというのは,まだだいぶ先の話かなと思っています。一方,利便性を増すようなリアカメラとか,ドライブレコーダー,ナビゲーションを使ったプローブカーといったものは早々に普及していくと思います。ドライブしながら写真や映像を撮りたいという要望がドンドン出てきているので,安全というよりも遊びや利便性という意味で増えていくのではないかと思っています。
聞き手:例えば,どのようなところに利用されていくのでしょうか?
下村:利便性という点では,アラウンドビューモニターのような「見えないところを見る」用途が根本的にあります。一方で,YouTubeのようなサービスを使って画像をみんなで提供し合ったり,フェースブックで共有したりという用途が広がるのではないかと思っています。
聞き手:そのためにカメラをクルマに付けるという考え方ですか?
下村:ええ,そうです。クルマにカメラを固定して取り付けて,ドライブ中ずっと撮っておきたいという要望もよくウェブなどで見かけますので。
聞き手:ここ最近,クルマやオートバイに小型のビデオカメラを取り付けて撮影しながら運転している人を見かけることがありますね。
下村:ビデオカメラが安く小さくなってきたので,誰でも簡単に取り付けられますし,また,メモリーも大容量かつ安価になっていますので,ずっと撮りっ放しという用途が多くなっています。ここ数年は,そういう使い方が増えているように感じます。
聞き手:クルマと外界の通信に,先ほどのYouTubeやフェースブック,ツイッターというソーシャルメディアが絡んできて,今後はますます面白いことが起こりそうな気がしています。その時にカメラはどのような役割を果たしていくのかな,とふと思いました。
下村:カメラから得られる映像は数ある情報の1つでしかないと言ってしまえばそれまでなんですけれども,映像というデータの価値から考えると,クルマから位置情報などを付加してサーバーにためていくような方向は考えられますね。
聞き手:本日はお忙しいところ,大変興味深いお話をありがとうございました。画像センシング展当日のご講演を楽しみにしています。
日産自動車(株) 下村 倫子
1991年,東京農工大学 工学研究科 電子情報工学博士前期課程終了。1991年4月,日産自動車(株) 総合研究所電子情報研究所に入社。現在,同社モビリティ研究室にて,運転支援に関する研究開発に従事(工学博士)。