セミナーレポート

誰にでも分かる,サービス現場でのユーザー特性の画像センシング技術 ~ユーザーの体形,運動,行動センシング~産業技術総合研究所 持丸 正明

本記事は、画像センシング展2010にて開催された特別招待講演プレインタビューを記事化したものになります。

復元テーブルを持つ者が強い

持丸:このときに大事なことは,減らしたデータから元のデータを復元できるテーブルを持ってる人の競争力が高いということです。データを簡単に取ることのできるセンサー技術などはドンドン安くなっていくわけですから,そのようなものは競争力になり得ません。
 先ほどのケースで話をすると,「あなたの体の座標をほんのちょっとだけ取れば,あなたの体の3次元形状を復元できます」となりますね。ところが,その復元には元となった膨大な10万点の3次元データから作った主成分行列が必要なのです。その行列を持っていない人は,なぜそんなわずかなデータから人の体を復元できてしまうのか分かりません。なぜなら,主成分行列の中に人間としての情報が全部入っているからです。「人間の個人差というものは,こういう範囲でしか起こり得ない」ということがこの行列の中に入っているから,その範囲を特定するいくつかのデータさえあればすべてが分かってしまう。

 先ほどのライフスタイルのケースもそうです。例えば「人間のライフスタイルは12個のカテゴリの中で十分分類できる」ということが説明できるなら,数少ない質問だけで人のライフスタイルのカテゴリが分かります。しかし,それを明らかにしたテーブルを持っていない人には,人のライフスタイルは絶対にマッピングできません。ということは,このテーブルが核心だということです。このテーブルを持つことこそが競争力を高めることになります。さらに,そのテーブルに地域差があって,時代変化が大きくて,個人差があればあるほど有利になります。

聞き手:先ほどのウェブログの話にも通じる内容ですね。

持丸:もし,Googleが持っているログデータと,それから作ったテーブルに地域差も個人差も時代変化もないならば,私は3日でGoogleの戦略に追いつけます。うちの研究室のログデータを見るだけで世界中のログが分かるというのなら,簡単に追いつけるということですね。でも,明らかにそうではありません。今,私がいかにリッチなデータを作ったとしても,Googleの10年分のデータには絶対に追いつけない。時代変化があるからです。当然,世界中の地域差や個人差があるものは先行者が有利になります。
 「センシング」というと,昔はデバイスやシステムの能力が競争力として高く評価されたのですが,現在は,デバイスとシステムを簡素化するためのコンテンツテーブルを持つ人や企業が有利に展開できるようになるというのが私の持論です。

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産業技術総合研究所 持丸 正明

1993年,慶應義塾大学大学院 生体医工学専攻 博士課程修了。博士(工学)。同年,工業技術院生命工学工業技術研究所入所。組織改編により2001年より産業技術総合研究所。デジタルヒューマン研究ラボ副ラボ長。2010年,デジタルヒューマン工学研究センター センター長。および,サービス工学研究センターのセンター長を兼務。計測自動制御学会,日本人間工学会,IEEEなどの会員。人体の形状,運動の計測とモデル化,産業応用に関する研究に従事。

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