セミナーレポート

誰にでもわかる「安全・安心のための画像センシング」三菱電機(株) 鷲見 和彦

本記事は、画像センシング展2010にて開催された特別招待講演を記事化したものになります。

個性として備える特徴を使う

 まず,生体個人認証の技術について紹介したいと思います。生体個人認証というのは,人が個性として備えている生物学的,行動学的な特徴を用いて,その特徴の持ち主が誰であるかを確認したり探し出したりすることです。生物,バイオの情報を計測して比較するために「バイオメトリクス」と呼ばれています。人体のどこが使えるのかという視点で考えると,「形態的な特徴」と「行動的な特徴」に分けられます(図)。  形態的な特徴は,個人の間で「形と模様」が違うものです。まず,その1つは手です。手には指紋があります。指紋は必ずしも指だけではなく手のひら全体に広がっていて,これを掌紋といいます。あるいは,手全体の形(掌形)も特徴になります。
 昨今,銀行などで非常に広く使われている静脈を使った認証は,皮膚の中の血管や表層にある静脈の枝分かれのパターンを利用します。血管(静脈)は人の手の甲以外に,手のひらや指にもあり,それがある程度広い面積を持っていることから検出しやすいわけです。
 次に目ですが,目には網膜と虹彩という2つの特徴ある部分があります。網膜は目の奥にある膜で,レンズを通して入ってきた光が結像するイメージセンサーのような部分です。網膜は血液を必要とするので微細な血管が多数あり,この血管を静脈と同じように考えてパターン認識するのが網膜認証です。一方,虹彩は目の黒目の絞りの部分です。虹彩にはしわがあって,このしわに個人差があるといわれています。
 そのほかにも,顔全体のパターン,耳,鼻などそれぞれのパーツにも特徴があるといわれています。さらに最近では,犯罪捜査においては指紋よりもDNAの方がよく使われるようになりました。ただしDNA を分析するには最低でも数時間を要するため,オンラインで認証できるようになるのは,だいぶ先のことだろうと思います。
 形態的な特徴に対して,行動的な特徴は「形と動き」です。例えば音声,筆跡,歩行といったものがよく使われます。音声は,声紋と呼ばれる音声波形の信号解析によって個人性を判定できます。筆跡は,書いた後の文字は真似ることができるのですが,書いている途中の筆圧パターンは真似ることが難しく,こういった信号をタブレットなどから取ることで,かなり高い個人性が得られるようになっています。

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三菱電機(株) 鷲見 和彦

1982年,京都大学工学部電気電子工学科卒業。 84年,京都大学大学院工学研究科電気工学専攻修士修了。84年,三菱電機株式会社生産技術研究所入社。 89?90年,メリーランド大学客員研究員。90年,三菱電機株式会社産業システム研究所。97年,京都大学工学博士。2002年~,三菱電機株式会社先端技術総合研究所,そして現在に至る。03?06年,京都大学大学院情報学研究科研究員(COE)・客員教授

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