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絶体絶命のピンチととらえられがちなことにも,必ず突破口はある株式会社日本レーザー 近藤 宣之

日本レーザー輸入振興協会をみずからが先頭でひっぱっていくワケ

聞き手:日本レーザー輸入振興協会(JIAL)の会長もされていらっしゃいますが,自社の成長だけでなく,レーザー業界をひっぱっていくのに,どんな活動をしていらっしゃいますか。

近藤:日本レーザー輸入振興協会は,1991年にできて,2016年でちょうど25周年になりました。私が引き受けたのは1998年からで,2018年2月でちょうど20年になりました。結果的に,それだけ引き受けてきたのには,幾つかの理由があります。1つは,日本レーザー輸入振興協会の会員の構成が変わってきたことがあります。まず,レーザー輸入業というのは,基本的には3つのカテゴリーに分けられます。もともと輸入業ですから,日本レーザーのように「輸入専門商社」というカテゴリーに入る部分があります。それから,2つ目が,理経とか,丸文とか,伯東のような上場企業で,「専門商社」と言われるのがあります。大企業の一部門でレーザーを扱っています。専門商社は総合商社に比べると規模が小さくて,その中でも,レーザーというのはごく一部に過ぎないのです。また,3つ目で非常に増えてきたのが,海外メーカーの日本法人です。今現在,日本レーザー輸入振興協会の会員になっているところだけを見ても,スペクトラ・フィジックス・ジャパン,オフィール・ジャパン,コヒレント・ジャパン,ソーラボ・ジャパン,それからレーザーライン・ジャパン,といった会社があります。
 一方,日本レーザー輸入振興協会ではメディアが会員となり,輸入業の人たちとコラボレーションして展示会の企画をすることも多いわけです。アドコム・メディアの国際画像機器展,画像センシング展,それからオプトロニクス社のOPIE,Laser Focus World,Inter Optoを主宰しているJTBコミュニケーションデザインなどが会員になったわけです。そうやって,レーザー輸入業界自体がだんだん構成人員も性格も少しずつ変わってきているのです。
 それから,活動内容そのものが大幅に変わってきたのもあります。日本レーザー輸入振興協会は,最初は,最先端のレーザーを輸入して展示会をやっていました。先端光テクノロジー展(Advanced Laser and Optics Exhibition)という展示会です。池袋のMIPROという通産省の外郭団体みたいなところが持っている展示会場で,来場者もだいたい1日1,000人くらい,3日で3,000人程度,プライベートショーみたいな展示会でした。ところが,MIPROが展示会場を閉鎖して無料で借りられなくなってきたので,展示会自体をどうしようかとなりました。
 そのときに,日本レーザー輸入振興協会の事務局を最初からずっとやっていた,精機通信社(現 アドコム・メディア)さんは,初代社長の松下さんが創業して,画像の展示会をパシフィコ横浜でやっていたのですね。それで,横浜で一緒にやろうということになりました。
 私は日本レーザー輸入振興協会の会長として,無料で借りてやっていた展示会から,少しでも安くやるためには,事務局をやっているアドコム・メディアと提携したほうがいいだろうということで,場所を移すことに決めたわけです。
 それで,最初のうちは相乗効果もあって維持していたのですが,だんだん参加者が減ってきたのです。そもそも,レーザーのジェネラルな展示会というのは,この頃,先端光テクノロジー展というアドコム・メディアと同時開催していた展示会,オプトロニクス社がやっているレーザーEXPO,これは将来的にOPIE,OPICになっていきました。そして,もう1つがInter Optoで,全部で3つありました。どの展示会も非常に集客に困っていました。
 集客が難しいと,展示会はやめようという話を何回もしてきました。やめるのであれば,今度は何をするかと,次のことを考えるようになるのです。会長としては,そういうことを考えていかないといけないし,責任もあります。
 そこで,もともと同じ分野で協力し合ってきたInter Optoで,展示会中にJIALグローバルテクノロジーセミナーというのをやることにしました。3日間にわたって1日6本で,18本ぐらい出たのが最大でしたね。それから,レーザーEXPOでもやろうということになって,翌年の4月に,JIALアドバンステクノロジーセミナーというのをやったわけです。その基調講演では海外のスピーカーや国内の教授を呼んできて,あとは日本レーザー輸入振興協会の加盟企業からそれぞれセミナーを出すようにしました。
 そのセミナー本数も,16本あったのが,14本になり,だんだん減ってくるわけです。なぜかと言えば,最先端のレーザー技術が,あまり世の中に出てこなくなったからです。ファイバーレーザー,ディスクレーザー,ダイレクトダイオードレーザーといったレーザーが出てくるところまで来ると,それから先,あまり技術の進歩がなくなってきて,新製品・新技術が出てこなくなってしまいました。海外のメーカーも合従連衡で,どんどん吸収合併したりして,系列がいろいろ変わって代理店が変更になったりして,上場企業の専門商社も有力な商権を失っていく状態でした。そうすると,独立系で一番規模の大きいのが日本レーザーなので,多いときは5本ぐらい出したことがあります。だいたい毎回3本は出し,あとは他会員企業でそれぞれ出すのですが,それもだんだん少なくなってきました。輸入商社ですから,最初は英語だけでセミナーをやっていたのも,集客を増やすため,日本語のセミナーにして集客の増加を見込めるような動きもしました。
 そういったことが,協会の会長を20年もの間やっていた最大の理由なのです。2000年頃は通信バブルのピークでしたから,展示会も2万人ぐらい集まって,商社もそのおかげで潤っていたわけです。それが2001年にはバブルは崩壊して,その途端に,1年後には売上がみんな20億円を割ってしまって,その後,レーザー関連の商社の中で売上が引き続き伸びていったのは,日本レーザーだけなのです。そうすると,日本レーザー輸入振興協会の会長は誰にするかを決めるときに,海外メーカーのジャパンの人よりも,あるいは大手企業の総合技術商社よりも,日本レーザーだろうということになってしまうという背景にあるわけです。
 結果的に,ボランティアみたいなことをやり続けた結果,20年もやってきてしまった,ということになります。そのなかで,日本レーザー輸入振興協会が,世界最先端の物を供給していく協会としての情報交換や親睦団体という役割は,だんだん薄らいできているように思います。次期会長はレーザー専門商社であるオーシャン フォトニクスの船木さんです。彼は日本レーザー輸入振興協会の活動にも毎回出てきてくれていますし,これからの組織の活性化のためにも,新しいリーダーが出たほうがいいのです。これからレーザー業界を引っ張っていってくれると思います。
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近藤 宣之

近藤 宣之(こんどう のぶゆき)

1968年3月 慶應義塾大学 工学部電気工学科卒業。同年4月 日本電子㈱に入社。電子顕微鏡部門応用研究室に勤務。1970年5月~12月 当時のソビエト連邦レニングラードとモスクワに駐在。1972年9月 全国金属産業労働組合同盟(ゼンキン同盟)日本電子労組執行委員長,東京地方金属副執行委員長,ゼンキン同盟中央執行委員兼任。組合役員退任後,経営管理課長,総合企画室次長等を歴任後,1984年11月に米国法人副支配人に就任。1987年4月 米国法人総支配人。1989年6月 日本電子㈱取締役兼米国法人支配人。1993年1月 同社取締役営業副担当。1994年5月 ㈱日本レーザー代表取締役社長に就任。1995年6月に日本電子㈱取締役退任後,㈱日本レーザー社長専任。1999年2月 日本レーザー輸入振興協会会長。2007年6月 JLCホールディングス㈱設立,代表取締役社長に就任。同時にマネジメントエンプロイーバイアウトにより日本電子㈱より独立。2018年2月 ㈱日本レーザー代表取締役会長に就任,現在に至る。2018年2月 JLCホールディングス㈱代表取締役会長に就任,現在に至る。2018年2月 日本レーザー輸入振興協会顧問に就任,現在に至る。
●主な活動・受賞歴等
2011年5月 第1回「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞,中小企業庁長官賞受賞。2012年1月 平成23年度新宿区「優良企業表彰」,大賞(新宿区長賞)受賞。2012年10月 第10回東京商工会議所「勇気ある経営」大賞,大賞受賞。2013年2月 関東経済産業局「女性活用ベストプラクティス」に選定 2013年3月 経済産業省「ダイバーシティ経営企業100選」全国43社に入選,受賞。2013年4月 経済産業省 「おもてなし経営企業選」全国50社に入選,受賞。2013年11月 東京都「平成25年度東京ワークライフバランス認定企業 - 多様な勤務形態導入部門」に選定。2013年12月 経済産業省 「がんばる中小企業・小規模事業者300社」に選定。2015年10月 厚生労働省「キャリア支援企業表彰2015」に選定。2016年2月 日本能率協会「KAIKA大賞2015」で「KAIKA賞」受賞。2016年6月 新宿区「ワーク・ライフ・バランス推進企業」認定。2017年1月 ホワイト企業大賞委員会「第3回ホワイト企業大賞」受賞。2018年2月新宿区「ワーク・ライフ・バランス アイディア賞」受賞。

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